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TOP教育情報処理自分と他者の役割を理解して「チームワークで成果をあげるSE」を目指す

自分と他者の役割を理解して「チームワークで成果をあげるSE」を目指す

連載元SEが教える、現場で本当に求められること

社内IT歴30年以上!プロジェクトマネジャーや部門管理者経験も豊富な元SEライターが、社会に出てから役立つSEの心構えやスキルを解説するシリーズです。現場で求められるSEになるためのヒントが満載です!

英和辞典で「teamwork」という英単語の意味を調べてみました。

そこには「チームワーク」というカタカナと「(統制のある)協同作業」という2つの意味が書かれていました。「teamwork」の最初に書かれている意味が「チームワーク」であるということは、完全に定着している外来語であるとともに、適当な日本語訳がないということが考えられます。
また、カタカナ語訳の方が最初に書かれていることにも興味をひかれます。

そこで今回は、SEにとっての「チームワーク」の意味と、SEの「成果」と「チームワーク」の関係についてお話しします。

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システム開発・運用におけるチームワークとは

「チームワークが良い」「チームワークが重要だ」という表現をよく聞きますが、実際の場面では辞書にある「統制のある」というニュアンスではなく、「一体感」「他者への敬意」「共感力」などが文脈に含まれることが多いのではないでしょうか。

「チームワーク」を詳しく説明すると、「ひとつの目標のために集まったチームの構成員が、自分自身の役割を認識し、その役割を全うすることに注力するとともに、ほかのメンバーの役割を理解して協力し、連携しながら全体の目標を達成しようとすること」ではないでしょうか。

例えば情報システムは、1本のプログラム単独では機能することができません。単独ではただのプログラムであり、情報システムとは呼びません。複数のプログラム、データベース、ネットワーク、外部のシステムとのインターフェースなどが有機的につながることによって機能するものが情報システムであり、まさにチームワークのようにそれぞれが役割を全うし、連携することで完成します。

また、情報システムを開発・運用するチームを考えてみましょう。チームを構成するメンバーもさまざまな役割を持った担当者たちです。情報システムを作り上げて安定稼働させるという共通の目的を持つ担当者たちが、有機的につながらないと目的を達成することはできません。これが「SEのチームワーク」であり、SEはその中心的な役割を担っています。言い換えると、チームワークがうまく機能しなければ、SEの仕事は成り立たないのです。

SEにチームワークの意識が必要な理由

では、「SEがチームワークの中心的な役割を担う」とはどういうことでしょうか。

SEは情報システムの構成やコンポーネント間のつながりを定義し、文書化する技術的な専門職です。一方、会社の考え方にもよりますが、「プログラマ→プロジェクトマネジャー→部門管理職」というようなキャリアラダーの中の一形態でもあります。
ただ、どちらの考え方であっても「情報システムの構成を検討し、プログラマやインフラストラクチャの各担当者と協力して実装を目指す」という目的のために、「良質なチームワークでチームをまとめる」という役割がSEには期待されます
システム開発の場合、SE、プログラマ、インフラストラクチャ担当者以外にもデータベース担当者、ユーザ教育担当者など、多数の人間が開発チームに参画します。
また、その中には協力会社の社員やパッケージシステムの販売会社社員が含まれることもめずらしくありません。システムの利用企業内でのチーム編成の場合は、業務部門の担当者がチームメンバーとなることも一般的です。
このような場合、SEには全体の整合性を確認する役割が与えられます。もしも完成したシステムが、実は整合性のないシステムだった場合、稼働後に必ず問題が頻発し「使えないシステム」になってしまいます

実は、私も過去に「使えないシステム」に陥りかけたことがあります。
プロジェクトマネジャー兼SEとして、あるシステム開発のためのチームを率いていたとき、後輩社員、協力会社の社員、パッケージ会社、業務担当者がバラバラに動いていたためプロジェクトが停滞したという経験です。
後輩社員は私に「協力会社の社員の動きが悪い」とクレームを入れてきます。協力会社の社員は私に「パッケージ会社が情報提供をしない」と不満を漏らします。業務担当者は高飛車な態度で日々新しい要求を追加してきます。最悪の状況でした。目標は共有できていたはずなのですが、それぞれの立場で認識が違っていました。それぞれが、自分の守備範囲を守ろうとしていたのです。

結果的に、WBSを利用して短期目標を設定し、全員でじっくりと目標達成方法について話し合い、協力体制を再構築することで切り抜けることができました。しかし、業務担当者についてはやはり折り合うことができず、その上司に「担当交代」を依頼して解決したという苦い思い出も忘れられません。

このように、SEとして成果をあげるために「良質なチームワーク」は欠かせない要素なのです。

学生にチームワークを意識させる方法

「チームワークの重要性」を意識している学生はあまり多くないのではないでしょうか。
それは、「今の若者」「Z世代」というような枠組みの問題ではなく、どの時代でも若者は、往々にして自分が属する狭い範囲での価値観の中で生きています。余程の精神的な指導を受けていなければ「チームワークを醸成する」「チームに貢献する」という考えは、生まれてこないと考えたほうが良いと思います。
だからこそ、学生時代のうちから「チーム」や「チームワーク」の意識を持てるような種をまいてあげましょう
では、学生に「チームワーク」を意識させるにはどんな方法があるのでしょうか。

ここでは、4つの方法をお伝えします。そのうちの3つ「チームビルディングゲーム」「仮想プロジェクト」「実プロジェクト」は、実際に構成したチームでアクティビティを実施し、チームワークの重要性を認識させる方法です。
もう1つの「コンフリクトマネジメント」は、チームで行う全ての取り組みにおいて大切にしたい考え方です。

また、アクティビティを実施するにあたって重要な注意点があります。それは、事前に「このアクティビティによってチームワークの重要性を認識する」という目的を明確に伝えることです。そして、その際には「チームワークとは」の説明も併せて行いましょう。そうでないと、「レクリエーション」の意識が出てしまい意味の薄いものになってしまいます。

なお、3つのアクティビティについては5~6名でのチーム編成が最適です。これは、コミュニケーションを活発に、かつ論理的に行わせるためで、2~3名だとおざなりになってしまい、あまり人数が多いと参画度の低いメンバーが発生するからです。

1.チームビルディングゲーム

「長い橋」や「高いビル」のような与えられたテーマの構造物などをブロックで作成して、チームの優劣を競います。ブロックの準備に費用が発生するため、ブロックではなく学校にあるものや学生から集めたものを使うこともできます。例えば、紙コップなどの食器やペットボトル、空き缶などが利用可能です。

また、ウォーキングラリーもチームビルディングに役立ちます。記号と矢印だけで示された指示書をもとにポイントをめぐり、そこに隠されたクイズを解いて得点を競います。また、指示書やクイズの作成もチームで行うことが可能です。

ただし、これらは単なる「遊び」になる危険性があるので注意が必要です。あくまで、「チームワーク」を意識することが目的です。

2.仮想プロジェクト

学園祭や体育祭など、仮想のイベントについて企画書を作成するプロジェクトです。企画書の内容はイベント準備のためのTo Do リストやWBSだけでもいいですし、予算獲得のための提案書のイメージでもいいと思います。重要なことは「どんな企画書にするか」からチームで話し合うことです。
タイミングが合えば、実際のイベントをプロジェクトとして利用できるといいですね。

3.実プロジェクト

簡単なシステム開発を実際に行うことが理想ですが、プロジェクト期間が長くなることと、年次によっては技術力が追い付かない場合があります。その場合は、実行可能なプロジェクトを先生側から提供することが必要になります。例えば、「『情報システムと生活の関係について』というようなテーマを決めて街角インタビューを行い、結果を発表する」というようなものでもいいでしょう。

この場合は、チームの全員が同じ役割を持つのではなく、役割分担についても学生たちで話し合うことからスタートしましょう。

4.コンフリクトマネジメント

チームでの活動では、必ずと言っていいほど「コンフリクト」=人間同士の衝突が発生します。ただ、これは悪いことではなく、立場の違い、価値観の違いから必然的に発生するものです。コンフリクトを乗り越えた先に「良いチームワークがある」のです

併せて、コンフリクトマネジメントについて紹介します。
コンフリクトマネジメントの考え方は、アメリカの心理学者Kenneth W. ThomasとRalph Kilmannが提唱した「人間同士の衝突が発生した際、個々の人間の性向として衝突にどのように対応するかは、5つの行動モードに分けられる」という理論に基づいています。この理論をチーム運営に反映させたコンフリクトマネジメントでは「チームの構成員が自分自身の行動モードを認識すること」「お互いがそれぞれの構成員の行動モードを知っておくこと」に加えて「各自がコンフリクトの状況に合わせて5つの行動モードを使い分けることができるようになること」が重要だとされています。

コンフリクトが発生した際、主に想定される5つの行動モードは以下の通りです。

(1)協調

お互いの意見の違いを理解し、両者の要求を満足させ、かつ、より良い解決策を見出すこと。

(2)受容

相手の意見を受け入れ、自分の意見を取り下げてしまうこと。

(3)妥協

両者が受け入れることができるように互いの要求レベルを下げて同意すること。

(4)回避

衝突を避け、互いが意見を主張せずに済ませてしまうこと。

(5)競争

自分の考えを主張し、相手を屈服させようとすること。

意見が対立した双方がどのような行動に出るかによっては、チームワークをより強化することが可能です。5つのモードを認識し、お互いが「協調」の態度を取れるよう、コミュニケーションの授業にも力を入れるとよいでしょう

最後に

私が勤務していた外資系企業では、各国担当者が集まる会議の1日目に必ず「チームビルディング」のアクティビティが行われました。それだけ「チーム」の意識を重要視していた会社だったのです。

「チーム」の意識を重んじるのは外資系企業に限らず日本企業も同様です。そして、業種を問わず「チームに貢献できる人材」「チームをリードしていける人材」が社会では求められています

特にSEは各コンポーネントの担当者とつながることで成果を挙げる職種です。
チームワークなしに優れたシステムは生まれません。システムのコンポーネントも人も有機的につながる必要があります。その成否を握っているのがSEだといえます。
学生のうちから、チームワークの大切さを意識してほしいと思います。

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この記事を書いた人
中村 信介

中村 信介

30年以上に渡りメーカーのIT部門でPG、SE、PM、部門責任者というキャリアを積む。現在はITと人材育成関係のWebライターとして活動。

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