連載少子化を生き抜く学校ブランディング
自校らしさとは?自校の魅力とは?よく分かっているはず……でも、本当に全員が同じように考えているでしょうか?外部へきちんと伝えられているでしょうか?競争の中でも選ばれる学校になるための学校ブランディングの基本メソッドを、ブランディングのプロがお伝えします。
前回はブランディング推進チームの重要性についてお話ししました。
前回の記事:【2】ブランディング推進チームを立ち上げよう!
今回は、ブランディングの土台であり、これから行うすべての活動の枠組みとなる「CI・強み・資源」について理解していきましょう。
目次
学校を形作るものは一体なにか?
「学校」を形作るものとは何であるのか、一緒に考えてみましょう。
皆さんの学校には校舎があり、皆さんのような教師や職員がいて、学生さんがいる。
授業カリキュラムがあり、学校説明会があり、試験がある。
毎日の授業があり、授業準備をして、学生にレクチャーし、質問を受ける。
皆さんが毎日仕事で行っている一つ一つの行動。
これらが学校という存在を形作っています。
これは当たり前の事ですよね。
では皆さん、こう考えてみたことはありますか?
「うちの学校らしい行動って?」
うちの学校らしい授業、うちの学校らしい教職員、うちの学校らしい学校説明会……等々、「うちの学校らしい」というのが、学校ブランディングのためのとても重要な考え方です。
学校ブランディングとは、他の学校と差別化を行い、学校の価値を高めて、学生、保護者、地域社会、そして職員や業界関係者などの間でファンづくりを行う事です。
すべての活動において「うちの学校らしさ」が表現されていることで、それを信頼し、魅力的に感じる人がファンとなります。
そして、ファンになってくれた方が学校の素晴らしさを周囲の方に伝え、良い評判が広まっていく――そのように信頼を積み重ね、「あの学校はブランドだ」といわれるようになるわけです。
ブランドは非常に強い吸引力を持っており、学生や保護者、教職員を惹き付けるのはもちろん、銀行やメディア、人材紹介など、事業運営を行う上で必要なサポートをしてくれる企業の協力も受けやすくなります。
では、「うちの学校らしさ」とは具体的にどんなものでしょうか?
「らしさ」を構成する3つの要素
「らしさ」は、大きく3つの要素から構成されます。
- コーポレートアイデンティティ(組織共通の概念・思想)
- 強み(組織が持つストロングポイント)
- 資源(組織が使えるリソース)
コーポレートアイデンティティ(CI)
コーポレートアイデンティティ(以下CI)は、組織の姿勢や存在理由を明文化したものです。 CIで表現される代表的な要素を4つ挙げます。
- 理念(存在意義・何を行うために存在している組織か)
- ビジョン(将来像・どういう未来を叶えていく組織か)
- 価値観(組織の持つ価値観や守るべき約束)
- 行動指針(職員にとって大切な心構えや行動)
他にも、ミッションやタグラインといった、企業を代表するキャッチフレーズなどがCIに含まれることもありますが、企業の性格によって表現するものは様々です。
強みと資源
強みと資源は似ているので同時に説明します。
組織の強み、ストロングポイントとは、競合他社と比べても強力で効果のある特徴を表します。
サービス面、広報・営業面、人材・組織面、環境面など、強みは様々な箇所に存在します。
資源とは、その組織が利用できる環境・人材・組織・資材といったリソース(材料)のことを指します。
これも強みと同様、企業が培ってきた活動の歴史の中で、使える資源が様々点在しています。
ブランディングの初期行動として、これらをまずは洗いざらい発見することが重要です。
発見した強みは3段階にランク分けすることができます。
- 模倣困難な強み
- 希少価値がある強み
- 必須の強み
「模倣困難な強み」とは、立地の強みや、紡いできた歴史からくる実力など「競合が絶対に真似できない強み」です。
「希少価値がある強み」とは、「競合と比べても優位性の強い特徴的な強み」です。
高い技術力や、運営の仕組みなど、自校らしい特徴を示した強みが該当します。
「必須の強み」とは、「競合他社と同レベル程度ではあるけれどもなくてはならない強み」です。
まずはあらゆる観点から自社の強みを発見し、その後ランク付けを行うと良いでしょう。
CIは全員に浸透してこそ効果を発揮する
CI(コーポレートアイデンティティ)は、机上の空論と捉えられやすい傾向があります。
皆さんも、自校ならではの考え方や指針を示した「理念」「ビジョン」「教育方針」などをご覧になったことがあると思います。
「そのようなCIが学校設立当初に作られたもので、現在の職員に理解されていない」ということもよくあります。
また、CIの文章は端的に書かれている場合が多く、その意味合いを職員同士できちんと話し合って共有しない限り、理解されるものではありません。
一回レクチャーした程度では、理念に共感するのは不可能といえます。
職員にしっかりと浸透させるのが難しいCIですが、魅力的なCIを掲げ、それがメンバーに浸透し、共感されている組織は、職員同士や関係者を巻き込んで非常に強いブランド力を発揮します。
浸透したCIは、次のような効果を組織にもたらします。
- 全ての活動において独自の基準・指針ができる
- 職員の愛校精神(エンゲージメント)とチームワークが育つ
- 職員の活動が建設的・自発的になり、ポジティブな業務推進ができる
- 教育・採用基準ができ、人が育つ環境ができる
- CIに共感した外部ターゲット(学生・保護者・関係者)をファンにする
また、強みはPRポイントになります。
こちらも職員に浸透させることができると、企画やPRを行う際の指針となります。
ホームページ、パンフレットにしっかりと掲載し、内外へ伝えていくことが重要です。
CIを浸透させるには?
職員にCIを浸透させるにはどうすればよいでしょうか?
企業では昔から、朝礼で理念を唱和する、CREDOを配布するなど、あらゆる方法を模索して理念浸透を図ってきました。
それらももちろん効果がありますが、やはり一番効果的なのは「共感するための対話の時間を持つこと」です。
職員同士で自分の考えや価値観をしっかり話し合い、共通のゴールや価値観を作り上げることができる環境が、CIが浸透する組織を作ります。
「ただでさえ忙しいのに対話など悠長な時間が取れるか」という声が聞こえてきそうですが、優秀な組織ほど、上司・部下が1on1(1対1の面談)を行ったり、全体会議・部門会議でいきいきとアイデアを出しあったりする時間を惜しまないことがわかっています。
パーパスを発見しよう
CIを浸透させるための対話でぜひ取り上げていただきたいのが「パーパス」です。
「パーパス(purpose)」は一般的に「目的」「意図」と訳されますが、ビジネスシーンでは「何のためにこの会社があるのか」という、組織や企業の「社会的な存在意義」を意味します。
類似の概念に「ビジョン」と「ミッション」がありますが、ビジョンとミッションが「目指すべきところ」へ向けての「未来志向」の言葉であるのに対し、パーパスは「現在進行形」の感覚で、「今この瞬間、自分たちは何のために存在しているのか、何ができるのか」を語るものです。
自分たちが何を大切にしてどういう働き方がしたいのか。
自分たちの社会的な役割は何か。
この組織らしさとは何か。
学生に何を提供したいか。
自分たちの強み・弱みは何か。
「今」を働いている職員同士で、共通の考え方を話し合い、発見し、明文化しましょう。
組織のビジョンやミッションを定義する根幹となるのがパーパスであり、このパーパスを重視する事業スタイルが、世界のビジネスシーンで昨今の重要なトレンドになりつつあります。
パーパスに立脚したメッセージに共感した学生や親御さんは、その学校に高い価値を感じてくれます。
同様に、職員も自校で働く意義とやりがいを強く感じられるようになります。
このように、存在理由を内外に広く深く認知してもらい、共感の輪を広げていく手法は「パーパスブランディング」と呼ばれます。
まとめ
組織のメンバー共通の価値観「CI」「強み」「資源」、それに「パーパス」が、全ての学校活動の基盤となります。 職員同士で対話を行い、共通の価値観を発見していきましょう。
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関本 大輔
株式会社アドハウスパブリック代表取締役。
中小企業専門のブランディングカンパニーの代表。
インナー・アウターブランディングの実践経験900件以上に及ぶ。
全国で講演を行い、企業ブランディングのノウハウを伝えている。
ストレングスファインダーの認定コーチでもあり、4,000名以上約200社のチームビルディングを行う。
[アドハウスパブリックHP] https://adhpublic.com/