昔から学校側が悩まされている問題の一つに、学生によるカンニング行為があります。従来の手口は手や太ももに書いたり、シャーペンの透明部分に紙を挟んだりが一般的でした。しかし、スマートフォンなどのデジタルツールが発達した今、カンニングの手口も進化しているようです。
そこで今回は、現代のカンニング手口や事例、対策を解説します。なお、本記事はカンニング行為を助長するのではなく、最新の手口を知っていただき適切な対応策の手助けとなることを目的としたものです。
目次
最新のカンニング手口3つ
デジタルツールの発達により、カンニングの手口も進化している様子。現代の主なカンニング手口は次の3つです。
- 持ち込み可能な物にカンニングペーパーを仕込む
- 替え玉受験
- SNSに投稿して解答を依頼
それぞれ解説します。
持ち込み可能な物にカンニングペーパーを仕込む
今でも使われることの多い手口が、持ち込み可能な物の中にカンニングペーパーを仕込む方法です。仕込みの対象となる例としては、以下があります。
- 消しゴム
- シャープペンシル
- 電子辞書(持ち込み可能な試験のみ)
アナログですが、準備が簡単なので手を出す学生が後を絶たないのかもしれません。
替え玉受験
替え玉受験とは、第三者が受験者になりすまして試験を受けることです。かつては受験者が会場に出向くのが一般的で、願書や受験票の顔写真で本人確認するため、実行は困難といわれた手口でした。
しかし最近は、オンラインで試験を実施する学校も増えています。パソコンの向こう側にいる人物が受験者本人か確認しづらく、替え玉受験の実行が容易になったといわれています。
SNSに投稿して解答を依頼
上着の袖などに隠したスマホで問題用紙を撮影し、写真をSNSに投稿。そこで友人や知人に解答を依頼するケースもあるようです。また、中には持ち込んだスマホでインターネット検索する学生も。デジタルツールが発達した現代ならではの手口といえます。
少人数の試験会場や教室であれば学生一人ひとりに目を向けられますが、人数が多い会場では完全な防止が難しいかもしれません。
実際に発生したカンニング事例
様々な手口が横行していますが、カンニングは高い確率でバレます。ここでは、実際に発生したカンニングの事例を3つ紹介します。
- 会社員が就活中の女子大学生になりすまし
- 袖に隠したスマホで問題文を撮影
- 日本語能力試験の合格を30万円で確約
それぞれ見ていきましょう。
会社員が就活中の女子大学生になりすまし
2022年に、会社員の男性が就職活動中の女子大学生に代わって替え玉受験した事例です。男性は「京都大大学院卒、ウェブテスト請負経験4年、計4,000件以上、通過率95%以上」と謳い、1件あたり数千円で依頼者を募集していました。主な集客方法はSNSだったようです。
初めて逮捕・有罪判決になった事例で、替え玉受験の問題が世間に広く認知されるきっかけとなりました。
袖に隠したスマホで問題文を撮影
19歳の女子学生が大学入学の共通テストの際、問題文の画像約30枚を「Skype」というアプリを使って複数の大学生に送信し、解答を募集した事例です。実際に2人の大学生が、解答を返信していました。
カンニングは計画的で、女子学生は事前に高校2年生を装って家庭教師の募集サイトに登録。教師志望の大学生に向けて「家庭教師を募集しています。依頼の前に問題を解いていただき実力を試したい」といった内容でアプローチしていました。
1回目の受験で希望の大学に落ちてしまい、再受験でどうしても合格したいと焦った末のカンニング行為だったようです。
日本語能力試験の合格を30万円で確約
業者による悪質なカンニングサポートの事例もあります。中国のチャットアプリ「WeChat」の日本在住者コミュニティー内では、30万円で合格を確約する旨の投稿が出回りました。
実際に試験が始まると、解答と思われる番号がWeChatコミュニティ内で共有され、消しゴムに仕込まれたApple Watchに届いたようです。このように単独ではなく、業者や集団によるカンニング行為も問題視されています。
カンニング経験者の割合はどのくらい?
塾マップを運営する株式会社SheepDogの調査によると、「したことはなく、しようと思ったこともない」という回答が約6割と最も多い結果でした。一方で「しようと思ったことがある」「したことがある」と回答した学生は約4割という結果に。
また一般財団法人全日本情報学習振興協会が、カンニング経験がある人を対象に「カンニングする人の心理」に関する調査をすると、以下の理由から行為に及んだことがわかりました。
- 絶対に合格したかったから(50.1%)
- 試験は結果だけが重要だと思っているから(20.3%)
- 悪いことだと知りつつも楽をしたかったから(14.8%)
絶対に合格したいという気持ちから、カンニングに手を出す学生が多いようです。
カンニングがバレるとどうなるの?
カンニングがバレれば、これまでの努力が水の泡になります。カンニングで取得した単位だけでなく、これまでの全単位が無効になる、テストがすべて0点になるなどのケースもあります。
カンニング行為にはデメリットしかありません。絶対に合格したいからこそ、カンニング行為は避けるべきだと学生に伝えていくことが大切です。
カンニングは罪になるの?
カンニングは、誰かを直接傷つける行為ではありません。そのため、バレても罪にはならないと考えている学生もいるでしょう。しかし、カンニングは「偽計業務妨害罪」に該当する可能性があります。
偽計とは、人を欺くために虚偽の事実を言ったり、虚偽の文書を作成したりすることです。該当すれば、3年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられます。
カンニング後は罪悪感に苛まれることも
カンニングしても、学校側が許せば罪に問われないこともあります。また、運良くカンニングがバレないこともあるかもしれません。しかし、あとから罪悪感に悩む学生は多いようです。
「合格したい気持ちから手を出してしまった」「みんなは自力で点数を取っているのに」など、周りに申し訳ない気持ちになるかもしれません。単位が取れたり希望の学校に合格できたりしても、本当の達成感は得られないでしょう。
カンニング防止のために学校側ができる3つの対策
学生に後悔させないためにも、学校側がカンニング防止に努めていく必要があります。主な対策は、以下の3つです。
- 電子機器の持ち込みを禁止する
- 不正行為を前提に問題を作る
- カンニングのリスクを伝える
電子機器の持ち込みを禁止する
スマートフォンはもちろんイヤホンやスマートウォッチなど、カンニングに使えそうな電子機器はすべて持ち込み禁止にしましょう。試験前には一人ひとり荷物検査を実施し、不正がないかチェックします。
チェックに厳しい姿勢を見せ、学生にカンニングは難しいと認識させることで予防に繋がるでしょう。
不正行為を前提に問題を作る
覚えた知識を試す穴埋め問題や選択問題の場合、カンニングペーパーで容易に点数を獲得されてしまう可能性が高いでしょう。そこで、不正行為を前提に問題を作るのも一つの方法です。
たとえば、文章を読み取る力や知識の応用力が試される記述式の問題であれば、カンニングペーパーで解答を得られにくくなります。学生の本当の実力も把握しやすくなるでしょう。
カンニングのリスクを伝える
カンニング防止の策を講じても、イタチごっこのように次々と最新の手口が生まれるリスクはあります。一番の防止策は、カンニングによるリスクの大きさを定期的に伝えて「カンニングしたくない」と学生に感じてもらうことでしょう。
罪に該当する可能性や罪悪感に悩まされるなど、良い点を取る以上にリスクが大きいことを理解してもらうことでカンニングの抑制に繋がります。
まとめ
カンニングは、一時的に良い点数を取れたとしてもリスクの大きい行為です。しかし「絶対に合格したい」「良い点を取りたい」というプレッシャーから、手を出そうとする学生もいるでしょう。
実行に移さないよう学校側で対策を講じ、目を光らせておく必要があります。加えてカンニングにメリットがないことを定期的に伝え、予防に繋げていきましょう。
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