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TOP教養スキルアップモチベーションアップのための土台づくり〜「エンカウンターグループ」のヒント(基礎編)〜【特別編 第7回】

モチベーションアップのための土台づくり〜「エンカウンターグループ」のヒント(基礎編)〜【特別編 第7回】

2024.10.08 (最終更新:2024.10.28) スキルアップ 教務情報

連載大原先生の学生指導のすゝめ

動機づけ教育プログラム「実践行動学」を開発する「実践行動学研究所」大原専務理事の学生指導のすゝめ。 学習塾での指導歴25年の大原先生が、実例を用いて学生への接し方をお伝えするシリーズです。 テンポのよいユニークな文章は、一度読んだらハマること間違いなし。

本連載の執筆者である大原先生が専務理事を務める「実践行動学研究所」のセミナーでは、コミュニケーションやモチベーションに関する講演を行っています。

この度、その講師である法政大学キャリアデザイン学部教授廣川進様より、「モチベーションや自主性を育むために」を主題として2記事を寄稿していただきました。
今回はその1本目です。

コロナ以後の若者の特徴や傾向、とりわけコミュニケーション力やモチベーションの低下に関する対策のヒントを、廣川先生がわかりやすく解説しています。
廣川先生が紹介する学生のエピソードは、先生方にも思い当たることがある内容かもしれません。
信頼関係を築き、心理的安全性を感じられる環境づくりに必要なものとは…?ぜひご覧ください。

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コロナ後の学生の変化

はじめに私が指導している臨床心理士や公認心理士を養成する大学院であった最近のエピソードをご紹介します。集中講義3日間で15回分の授業を担当しています。

四人一組のグループで話し合いをしているときでした。
あらかじめ書いてきた文章を1人ずつ読み上げてもらい一巡したところで、ほとんどの院生が私の顔を見てくるのです。

「先生、終わりました。次は何をしたらいいですか?」という表情です。

話し合いの最中も、みんながパソコン画面に目を落としていて、話し手の顔を見ることもありません。そして声が小さい。ひとりごとをつぶやくときの声量のようです。グループで話す際も、教室で全体に向けて発言するときも同じで、声量の調節がないのです。
これが高校を出たばかりの新入生ならばまだわかりますが、大卒の、しかも心理職の専門、いわばコミュニケーションのプロを目指そうという大学院生の授業で起きたことが衝撃的でした。

気を取り直しながらこう伝えます。                              
「まず、話し合うときは話し手の顔を見て。視線を合わせて。ときどき相づちやうなずきで聞いていることを言語・非言語でも相手に伝えよう。カウンセリングのスキルの初歩からの確認です。
それから話し合いのやり方について。ひととおり各自の意見を出し合ったら、そこからが話し合いです。
自分の意見と似ているのか?違うのか?それぞれの理由、話し合うテーマを絞っていく。まだ出ていない観点はないか?など。
何よりもまず一人ひとりの発言が終わったら、拍手してみんなが受け入れていることを伝え合っていこう。」

どれも、通常であれば大学1年生の基礎ゼミの初期段階で練習しておくべきことかと思います。これも三密を避けてきたコロナの影響を受けているのでしょうか。

コロナのせいだけなのか、あるいはもっと前からの傾向にコロナで加速がついたのか判然としませんが、「コミュニケーションやモチベーションの根幹の力」がこの数年でガクンと落ちてきた実感があります。
他者への 興味、新しいことにチャレンジする行動力・・・・・・熱量というか覇気というかが、下がってきた感じです。

思えば、ちょうどその代は入学式がなかった年の学生です。大学院には進学せず、卒業して社会人になっている人たちはどうしているでしょうか。企業の人事の方々と話していると、離職のタイミングが早いような話も聞きます。指示待ちで自主性が物足りない、という声は昔からありますが、なおさら強まってきているのかもしれません。

モチベーションや自主性を育むために 

私の所属する大学3年のゼミでは、今年は昨年の反省も活かして、学生自身から出される企画をなるべく取り入れるようにしてきました。

ハロウィーンやクリスマスのパーティ(教室でピザの出前をとりジュースを飲みながらイントロ当てクイズ等のゲームを行うささやかなものです)、お台場の洒落た場所で授業にゲストで来てもらった大人たちも交えてのBBQ、山中湖での夏合宿など、学生がアイデアを出して企画実行をやるようになりました。
 
冒頭のエピソードについて、みなさんの教室での実感と比較してどのように感じられましたか。
「最近の若者は・・・・・・」と嘆いてばかりいても仕方ありません。
彼らの目が生き生きと輝くような仕掛け。私は好きなこと、興味があることに仲間と取り組ませる中にヒントがあると思っています。モチベーションや自主性を育むには、お膳立てやセッティングをした上で口を出すのは我慢して任せてみることがポイントです。

その前提として、教室内でクラスメート同士や教師との信頼関係が築かれていることが必須となります。この場ではどんなことを口にしてもバカにされない、評価が下がらないという「心理的安全性」をメンバー全員が感じられることが大切です

エンカウンターグループ

その「心理的安全性」を育む方法のひとつに國分康孝・國分久子が創始した「構成的グループエンカウンター 」というアプローチがあります。

「エンカウンター(encounter)」とは「出会い」という意味で、アメリカの臨床心理学者であるカール・ロジャースが開発した「エンカウンターグループ」というカウンセリング手法を基にしています。
メンバー同士が本音で話し合い、互いに理解を深めることを目的としており、あらかじめ時間や人数、課題などを設定しているものを「構成的グループエンカウンター」といいます。

「構成的グループエンカウンター」では、以下の柱に沿って活動を進めます。

【1】インスタラクション(教示)
【2】エクササイズ(心理教育的体験学習)
【3】インターベンション(介入)
【4】シェアリング(分かち合い)  ※1

詳細は次回に譲るとして、ここではグループエンカウンターの活動に入る前のアイスブレイクを紹介します。アイス(緊張)をブレイク(一気に溶かす)する短い簡単なワークです。

<後出しじゃんけん>
まず、「私とじゃんけんしましょう。」と言って学生とじゃんけんをします。
次は全員に勝ってもらいたいので後出しじゃんけんをします。
「私が出したものに勝てるものを後出しで出してください。」と伝え、その後数回やってスピードアップしていきます。 ※2

クラスの集中力を高める効果もあるのでおすすめです。

以上、第1回では最近の学生の傾向から、あらためてグループワークの重要性をお伝えしました。
第2回では具体的なエンカウンターグループのワークを紹介していきます。

<参考>
※1
「構成的グループエンカウンター」図書文化社(URL:http://www.toshobunka.jp/sge/whats/index.htm)
「構成的グループエンカウンター事典」國分康孝・國分久子総編集、図書文化社、2004年

※2
「リラックスと集中を一瞬でつくる アイスブレイク ベスト50」青木将幸著、ほんの森出版、2013年

▼ウイナレッジ編集部からのお知らせ

本記事を寄稿してくださった法政大学 廣川教授が、「実践行動学Webセミナー」にて基調講演講師として登壇されます。

実践行動学は、学生の夢の実現、目標達成に必要な「心のあり方」と「達成のスキル(技能)」を身につけることを目的とした、アクティブ・ラーニング型動機付け教育プログラムです。ぜひこの機会にご参加ください。

【実践行動学Webセミナー】
・基調講演タイトル:モチベーションアップのための土台づくり「エンカウンターグループ」のヒント(基礎編)(法政大学 キャリアデザイン学部教授 廣川進様)
・日にち:2024年10月17日(木)、2024年11月19日(火)
・会場:オンライン会場(Zoom)
・主催:一般社団法人 実践行動学研究所
・後援:株式会社 ウイネット
・参加費:無料

詳細はこちら

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この記事を書いた人
廣川 進

廣川 進

法政大学 キャリアデザイン学部 教授(公認心理師・臨床心理士・文学博士)。
1959年生まれ。慶應義塾大学文学部卒業後、株式会社ベネッセホールディングスにて、雑誌編集(『ひよこクラブ』の創刊等)の傍ら、大正大学大学院臨床心理学専攻修士・博士課程を修了。2001年退社後、大正大学心理社会学部臨床心理学科教授を経て現職。

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