連載IT弁護士が教える!最新インターネット・SNSトラブル
近年、後を絶たないSNS・インターネット上でのトラブル。学生だけではなく、先生個人としてや学校公式のSNS運用においても注意が必要です。 元ITエンジニアで「IT弁護士」として活躍しているモノリス法律事務所代表弁護士、 河瀬弁護士に最新の事例とともにアドバイスしてもらいましょう!
近年、学生のみならず、教員個人のSNS利用がトラブルに発展するケースも増えています。学生による投稿と比較して、教員によるSNSトラブルは、学校全体の信用問題へ発展しやすい傾向にあるため、学校側としても迅速かつ適切に対応することが求められます。
そこで本記事では、教員個人のSNS利用に起因する実際のトラブル例と予防策についてと、さらに近年特に問題となっているインターネット・SNSを悪用した詐欺についても解説します。
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目次
教員によるSNSトラブルの例
教員によるSNSトラブルとしては、例えば以下のようなケースが挙げられます。
- 学生のプライバシーに関わる事項を投稿した
- 学生や保護者、同僚への悪口を投稿した
- 政治・宗教的に過激な投稿をした
- プライベートにおける不適切な写真や動画を投稿した
こうした教員によるSNSトラブルの背景には、教育現場ならではの特性が影響しています。
まず、教育現場では、学生のプライバシー保護が特に重視されることから、無意識に投稿した写真やエピソードが、学生本人や保護者だけでなく、第三者からも批判の対象になりやすいという点があります。
また、教育現場では政治的・宗教的な中立性や多様性も求められることから、過度に偏向的な発言や投稿は、仮に私的なSNSの投稿であっても、トラブルに発展するケースは少なくありません。
そして、上記のようなSNSトラブルは、教員個人の問題のみならず、学校全体の信頼を損なうおそれがあるため、学生だけでなく、教員側のネットリテラシーの向上も学校にとっては重要な課題です。
SNSトラブルを防ぐための注意点
各教員がSNSトラブルを未然に防ぐためには、日頃から以下のような点に気を付けるべきでしょう。
1.感情的な発言を避ける
SNSは公の場であるため、感情的な発言や過激な意見は、誤解を招いたり他人を傷つけたりする可能性があります。意見を発信する際には冷静に、理性的に思考してから投稿することが大切です。
2.学生や同僚へのリスペクトを忘れない
SNS上での学生や同僚に対する批判や侮辱的な発言は、信頼関係を破壊し、教育効果を阻害する原因となります。学生の模範となるべく、相手を尊重し、どんな状況でも冷静に礼儀正しく接することはSNS上であっても必要です。
3.プライベートと仕事の境界を明確にする
SNSはプライベートな場として使う、または仕事に関連した内容に限るべきかを自分で決め、プライベートと仕事の境界を明確にすることが重要です。仮に教師の立場でSNSに投稿する場合には、学校や学生などに対する影響を常に考慮し、職場に対する個人的な意見や感情はできる限り投稿しないようにしましょう。
4.批判的な意見は慎重に発信する
教員は社会問題や政治的な立場に関する意見をSNSで公開する際に注意を払うべきです。個人的な意見を表明すること自体は問題ではありませんが、教師という立場から発信する場合には、中立性を保ちつつ、偏った情報や誤解を招く内容を避けるよう心がけましょう。
5.プライバシーを守る
教員は学生の個人情報や学校での出来事について、勝手にSNSで共有しないことが求められます。学生のプライバシーを守ることは、教育者としての最低限の倫理です。
6.非公開設定を利用する
すべての投稿を公開する必要はありません。プライベートな内容や職務に関連しない内容については、SNSアカウントを非公開に設定し、友人や家族など限られた人々とだけ共有することが有効です。公開の範囲を制限することで、誤解を招くリスクを減らすことができます。
7.学校のSNS研修などに積極的に参加する
学校で開催されるSNS研修に積極的に参加するなど、日頃からネットリテラシーを高めるための努力を怠らないことはとても重要です。学校によっては、SNS利用に関するガイドラインが策定されている場合もあるため、定期的に確認するようにしましょう。
8.学校に相談する
ストレスを抱えた際には、SNSにネガティブな投稿をする前に、学校や同僚へ相談するようにしましょう。SNSにネガティブな投稿をしても問題は解消しませんが、相談によって解消を図ることは可能です。
SNSトラブルに巻き込まれないために
以上は、「トラブルを引き起こさない」ために重要な点ですが、「トラブルに巻き込まれない」ために、よくある事例について知っておくことも重要です。そこで以下では、近年特に問題となっているインターネット・SNSを悪用した詐欺の具体例を5つ紹介します。
1.SNS型投資詐欺
SNSの投稿やダイレクトメッセージなどを通じて、「簡単に高額なリターンを得られる」「確実な投資案件がある」といった甘い言葉で勧誘し、投資をさせる手法です。実際には、詐欺グループが開設した偽の投資プラットフォームに送金させられ、最終的に金銭を持ち逃げされるケースが多いです。
2.ロマンス詐欺
ロマンス詐欺とは、SNSを通じて出会いを求めているふりをして、相手に感情的に近づき、信頼を得た後で金銭を要求する詐欺です。被害者は、相手に恋愛感情を抱くようになり、その結果金銭を送ってしまいます。特に、出会い系アプリやSNSで知り合った人物が詐欺師である場合が多く、相手の「困った状況」や「緊急事態」を理由に金銭を送らせます。
3.フィッシング詐欺
フィッシング詐欺とは、偽のウェブサイトやメッセージを利用して、被害者の個人情報(ID、パスワード、クレジットカード情報など)を盗み取る手法です。SNS上で偽のリンクを送信し、公式アカウントからのメッセージであるかのように見せかけることが一般的です。例えば、偽のAmazonやPayPal、銀行の公式ページなどへのリンクを送信し、ログイン情報を盗むことを目的としています。
4.なりすまし広告詐欺
SNS上で「有名ブランド」や「人気商品」のなりすまし広告を表示し、偽のオンラインショップに誘導して金銭をだまし取る詐欺です。これらの広告は見た目が本物に似ており、消費者がクリックすると、偽の製品やサービスの購入を促されます。支払いが行われた後に、商品が届かない、または全く違う商品が届くといった事態が発生します。
5.偽アカウントによる詐欺
著名人や有名企業になりすました偽アカウントが作成され、フォロワーを騙して金銭を巻き上げる事例が増加しています。例えば、著名人や有名企業の名前やプロフィール写真を盗用し、DMやコメントで「プレゼント企画」などを告知して、金銭や個人情報を求める手口です。
上記のようなトラブルは、年々手口が巧妙化しています。そのため、「自分なら大丈夫」と慢心せず、日頃からアンテナを張り、情報を更新していくことも重要です。それと同時に、個人情報や安易に入力しない、信頼できる情報源を確認するといった基本的な対策を常に心がけましょう。
まとめ
教員によるインターネット・SNSトラブルは、教員個人だけでなく、学校全体の信頼や教育環境に大きな影響を及ぼすリスクがあります。そのため、学生だけでなく、教員側もネットリテラシーを向上させることが求められています。
教員も一人の人間ですから、怒りを覚えたり悲しんだりすることはあります。ネガティブな内容の投稿をしたくなることもあるでしょう。そんなときこそ、自分が教員を目指したとき、教員になったときの初心を思い出し、教員の中立性と責任を再確認して、踏みとどまることが重要です。
学生のネットリテラシー教育に
河瀬弁護士に監修いただいた書籍「SNS・ネットで違法行為をしないためのガイドブック」(ウイネット)では、実際に起こり得る身近な例をもとに、SNSやインターネットで誰もが起こしてしまう可能性がある違法行為のリスクや、その防ぎ方を学べます。学生に伝わりやすいよう、トラブル例は漫画で紹介、法律違反もイラスト付きでやさしく解説しています。グループワークなどで使用できるトラブルクイズも掲載。学生がSNSやネットをより安全に使用できるようにするための指南書です。
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河瀬 季
モノリス法律事務所 代表弁護士
小3でプログラミングを始め、19歳よりIT事業を開始。
ベンチャー経営を経て、東京大学法科大学院に入学し、弁護士に。
モノリス法律事務所を設立し、ITへの知見を活かして、IT・ベンチャー企業を中心に累計1,297社をクライアントとしている。
モノリス法律事務所:https://monolith.law/