大学、短大ではFD活動の一環として、専門学校では授業内容の向上を目指して、教員に向けた「公開授業」が盛んに行われるようになりました。
この記事を読まれるみなさんの中にも公開授業を経験した方もいらっしゃるのではないでしょうか。
これだけ盛んに行われるようになった公開授業ですが、基本的なルールやノウハウが学校にある場合が少ないのが現状です。
そこで、今回は公開授業をすることになったけれど、何を準備したらよいのだろうと困っている方に、心構えや事前準備の内容をご紹介します。
公開授業の準備をすることは、実は普段の授業をより良いものにすることにもつながっています。
ぜひ、参考にしてください。
目次
良い公開授業とは
良い授業とは見ていて安心できる授業ということができます。
そうかなと疑問に思う方にたとえ話を一つ提示いたします。
「もしも、教員が自信なさそうに授業をしていたら学生はどう思いますか?」
不安ですよね。
堂々と教えることが安心につながります。
これは、みなさん納得できることだと思います。
安心できる授業は良い授業であり、不安になる授業は良くない授業ということができます。
今回のような公開授業の場合は、学生、見学する側(見学者)、公開授業をする側(授業者)の3つの立場の人が一つの教室に集います。
良い公開授業とは、この3者が安心を得られる授業であると定義しようと思います。
では、どのようにしたらこの3者が安心できるでしょうか。
まとめると、以下のようになります。
・学生にとっての安心
→後ろで見ている先生が何を観察しているかがわかる
→自分たちがどのような流れで学んできたか、見学者が知っている
・見学する先生にとっての安心
→何の授業で、現在、学生が何をしているのかがわかる
・授業をする先生にとっての安心
→どのような目標をもった授業か、見学者に理解されている
→フィードバックをもらう項目をあらかじめ理解している
それでは、先ほど述べました3者の安心を生み出す方法をより深く掘り下げていきます。
学生にとっての安心
まず、第一に学生にとっての安心をもたらすために行う準備を2つ提示します。
特別なことをせず、いつも通りの授業をしようと心がける
公開授業の日だけ、教員は頑張ってしまって特別なことをやりがちです。
しかし、その日だけ特別なことをするのは、あまりおすすめしません。
不慣れな状況で特別なことをしようとすると、先生も学生もかなりの確率で緊張し、思うような授業展開ができません。
また、先生にとっては公開授業という特別な日ですが、学生は普段通り授業の内容を理解しなければなりません。
このことから、学生に負担をかけすぎないためにも、いつも通りの授業をしようと心がけることが大切です。
公開授業があると事前にアナウンスをする
学生に対して、
「公開授業になるため、教室後ろに見学者の方が複数来ますよ。」
「見学の先生方は学生を注意しようと思って教室に来ているのではなく、授業をする教員を見に来ています。」
「普段と授業の雰囲気が異なるので、緊張するかもしれません。そのため、公開授業が始まる前にはトイレに行っておくといいでしょう。」
などを、事前に話しておくことが重要です。
また、公開授業について質問等が学生から出た場合は必ず答えて安心させてください。
先生も緊張しますが、学生も緊張します。
一緒に授業を作り上げる意識を持つと良いでしょう。
見学する先生にとっての安心
ご存じの通り、授業は連続性のある中で行われています。
今日の授業がどんな流れの中行われているのか、見学者にわかるようにすることが大切です。
見学する側は、通常の授業が行われてきた中に突然入ってきて見学をする状態です。
授業をしている先生、受けている学生にとって当たり前の認識となっていることも見学する先生にはわかりません。
目の前でいま、何が行われているのかわからなければ授業に対して指摘をすることは不可能に近いです。
そのため、見学する先生にとっての安心をもたらすために行う準備を2つ提示します。
公開授業の授業案・前回までの課題を示す
見学する先生に状況がわかるように授業の流れを示した授業案を資料として提示すると良いでしょう。
どんな狙いをもった授業なのか、どんな知識を特に意識して授けたいのか明確にわかります。
そして、授業案には授業の流れだけでなく、「学生に出す指示」「予想される反応」などを記入しておくと、見学する先生はより授業における教員の指示と学生の反応に興味を持つことができます。
また、学生たちがどのような状況で今日の授業に挑んでいるのか、前回までの流れや課題等を出しているのであれば、それを示すと良いでしょう。
より見学する先生が学生の立場を理解して見学をすることができるようになります。
そうすることによって、
「前回の授業はどんな内容だったんだろう。今集めている前回の課題ってどんな内容なんだろう。」
という疑問を持たずに安心して授業を見学することができるようになります。
シラバスを示す
先生の中には、当日の授業の流れだけでなく、年間計画の中での公開授業の内容がどうだったかを考える方もいます。
そのため、今、何の授業で、何回目で、テーマは何かがわかるように、その科目のシラバスを教室内に資料として見ることができるようにしておくとよいでしょう。
見学者によりよく自身の授業の改善ポイントを判断してもらうためにも、このひと工夫はおすすめです。
授業をする先生にとっての安心
上記授業案やシラバスの提示は、授業をする先生にとっても見学者が授業の流れを理解してもらえる点で安心できるものになりますから、実践をおすすめします。
プラスアルファとして、授業をする先生が安心できる準備を1つお伝えします。
フィードバック用紙を準備する
公開授業では、制度として見学者がフィードバックをすることになっていることが多いでしょう。
それでも自身(授業をする側)が話のテンポ、板書の美しさ、声のボリュームなど、それぞれ特に指摘をもらいたい箇所があると思います。
また、この授業ではこういった工夫をしてみたのでこの点について意見をもらいたい、ということもあるかもしれません。
既定の用紙がある場合でも、自身が知りたいこと、聞きたい感想、指摘をもらいたい点などを書ける用紙を用意しておくと良いでしょう。
自分が意図をもって行った授業が見学者にどう伝わっていたのを確認することにより、自分の工夫に対する反応を知ることができて安心につながります。
また、項目を限定しておくことで、どのようなフィードバックがくるかある程度想像ができ、緊張を和らげることが可能になります。
まとめ
・普段通りの授業を心がける
・学生に事前に公開授業の説明をする
・今までの授業展開の資料と授業案・シラバスを示す
・フィードバック用紙を準備する
公開授業をする際に準備をしてみてください。もしも、公開授業でない、見学者が居ない普段の授業でも準備をしてみてください。自分の授業を客観的に見つめなおすことにつながります。見学者の代わりにフィードバックは学生に求めればよいです。
教員も学生も授業の当事者同士です。公開授業は、そこの場所に、客観的な見学者が来ることを前提として準備します。そうすることで、今まで主観的に捉えがちであった授業を、客観的に見つめなおすことができます。従って、普段の授業の授業でも、公開授業と同じような準備をすることで授業を客観的に見つめなおすことにつながります。指摘は学生から受けても良いでしょう。
以上は、新しく教壇に立つ皆さんに向けて書きましたが、そうした時代を過ぎて慣れてきたころにもう一度授業を見つめ直すことにも役立ちます。
ぜひ、お試しください!
\ぜひ投票お願いします/
伊藤 圭一
豊橋創造大学短期大学部 教授
豊橋創造大学公務員試験支援センター長
公務員別科長
話すこと、相手にわかってもらうことが大好きで教員の道を目指す。
大学院修了後(教育学修士)、専門学校教員を経て現職。
楽しく授業をするのをモットーにして笑いのある授業を実践している。
特に授業の導入部分の面白さには定評があり、オンライン授業の際は「面白いよ」と学生が家族を誘って授業に参加させたこともあるほど。アクティブラーニングを軸とした授業が好評であり、教員向けの研修も担当している。
2022年度ベストティーチャー賞を受賞。