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【1】「動画教材」で学生本位の授業を目指す(インタビュー)

2022.04.13 (最終更新:2022.05.11) 記事 教務情報

連載麻生塾に聞く!教育ICT活用

九州最大級の総合専門学校グループ「学校法人 麻生塾」の教育ICT活用について、牽引役である若山先生・藤澤先生にお聞きする注目の連載。「コロナ禍の緊急対応」に留まらない中長期的な取り組みの展望から、大きな組織での情報共有とプロジェクト推進の秘訣、すぐに真似したいテクニックまで、貴重な知見を惜しみなくお伝えします。

九州最大級の総合専門学校グループ「学校法人 麻生塾」の若山先生藤澤先生にご協力いただき、連載を開始いたします。
テーマは「教育ICT活用」。
両先生は、麻生塾の教育ICT活用を力強く推進しておられるキーパーソンです。

本連載のきっかけは、ウイナレッジを運営しているウイネットの代表がとある会合でお二人の講演をお聞きし、大変な感銘を受けたこと。
「コロナ禍でのやむをえない遠隔授業への対応」に留まらない、積極的なICT活用による中長期的な教育の質向上の取り組みや、麻生塾という多くの学校を擁する大きな組織で知見を共有しあう方法など、もっとお聞きしたい!他の困っている学校・先生方にも知らせたい!と思い、連載の依頼をしたところ、ご快諾いただきました。

第1回はインタビュー形式で、両先生の取り組みの概観をお伝えします。
第2回以降は、若山先生・藤澤先生それぞれの取り組みについて詳しくご紹介いただきます。

ICT活用の度合いは学校により先生により様々だと思いますが、授業を担当する先生がすぐに実践できるテクニックから専門学校での教育のあり方を考えるためのヒントまで、教育をよりよくしたいという志をお持ちのすべての方に参考にしていただける連載です。

どうぞお楽しみください!

両先生のプロフィール

新連載がはじまりました!
その名も「麻生塾に聞く!教育ICT活用」。
九州最大級の総合専門学校グループ「学校法人 麻生塾」から、このお二人をお迎えしました。

こんにちは!いつもお世話になります。麻生塾の若山です。

同じく麻生塾の藤澤です。今日はよろしくお願いいたします!

まずはお二人のプロフィールをご紹介します。

若山 祐紀憲 先生
学校法人麻生塾 コンテンツ推進部

麻生塾における教育ICT活用の第一人者
専門は、公務員試験における「判断推理」「数的推理」「資料解釈」など。
麻生公務員専門学校福岡校にて教鞭をとっていたころ、面接指導がきっかけでYouTubeなどの映像配信プラットフォームに関心を持ちはじめる。2013年にホームビデオカメラから始まった授業・教材の映像化は徐々に成果につながり、麻生キャリアサポートでのICT活用教材の作成・販売へと活躍の場が広がっていく。
2020年、コロナ禍に入ると、グループ内の「遠隔授業の支援」を使命に教育推進部へ異動。長年の映像教育の経験を活かし、同塾内のICT教育活用を推進するとともに、自らも教鞭をとり、ICT教育活用の実践と仕組み作りに邁進。
2022年4月より現職。麻生塾グループ開発の教育プラットフォーム「Teachare」の開発・普及に取り組む。

藤澤 昌聡 先生
麻生情報ビジネス専門学校 教務部 システム開発分野 常任講師

麻生塾における映像コンテンツ授業の伝道師
専門は、プログラミング情報処理ITビジネス
2020年4月、新型コロナウイルスの感染拡大により突如やることになった初の遠隔授業で「(おもしろいと思っていた)自分の授業が、動画で見るに堪えない」ことにショックを受ける。同時に、教師の立ち位置が変わっていく「ゲームチェンジ」を予想。急遽、自身の教育力の見直しと研鑽に取り組み始め、かねてから関心のあった「教育をエンターテイメントに」を追求している。そのロールモデルは、オリエンタルラジオの中田敦彦氏。
さらに同塾内の教師陣に向けた学内動画チャンネル「おたがいさまチャンネル」を立ち上げ、映像コンテンツ教育について、情報発信と啓発活動を続けている。

動画を活用した授業~若山先生の場合~

私は現在、ざっくり言うと「動画教材を使った授業、その仕組み作り」をしています。
履修課程の2年間を3つの段階に分けて、実際の授業で効果検証をしました(一部継続中)。

教材で動画を活用しているんですね。
それは遠隔授業用ですか?

いえ、遠隔授業に限らず、対面授業でも動画教材を使っています

そうなのですね!
それでは、直近の2年間の取り組みについて具体的に教えていただけますか?

2年課程の公務員総合科では
①知識インプット期
②演習・復習期
③直前演習期
という3つの段階があります。
それぞれで動画教材を活用しました。

今回は、わかりやすい「②演習・復習期」について説明しますね。
この段階では、「知識を再インプットしたい学生」「インプット出来ているかの確認をしたい学生」「知識を応用したい学生」が混在しています。
それを、個々の学生の理解度(自己判断)に合わせて、学生主体かつ迅速にフィードバックしながら授業を進めたいと考えていました。

遠隔授業の場合の運営方法

  1. 授業開始時、全員「授業用チャネル」に集合
  2. その回の演習テーマについて「得意」「普通」「苦手」を自己申告
  3. 理解度別にチャネルを分けて進行する
    得意:演習用チャネルで問題演習(応用問題中心)→動画解説視聴
    普通:演習用チャネルで問題演習(基本問題中心)→動画解説視聴
    苦手:個別対応用チャネル先生が基礎授業を行う)

同じ授業内で、チャネルを分けて進めるんですね!
「苦手」の学生には先生の個別対応がつき、「普通」「得意」の学生は、演習問題と解説動画でどんどん進めていけると。
満足度も上がりそうです。

一斉に授業するとどこかに合わせるしかないですが、このようにすることで、学生が自身の理解度に応じて学習内容を選び、主体的に授業を進めることができます
学生アンケートの反応も上々でしたよ。

アンケート結果を見せていただきましたが「自分のペースで勉強できるので良い」「分からないところをそのままにしてしまうことがない」などの声が多いですね。

別段階でも検証を進めたことで、学生本位の学習環境にすると、勉強に対して主体性が身につきやすくなることがわかりました。

先生が教壇に立ってクラス全員に同じ授業をするという従来のスタイルに慣れた方にとっては、「学生がそれぞれ動画を見て進めるなんて本当に大丈夫?」という不安がありそうですが、単に従来型の授業を映像に置き換えるのではなく、学生本位の学習環境を作ることで従来よりも学生の主体性を伸ばしながら学習効果も高められるんですね。

そうですね。あくまで目的は「学生本位の授業にする」ことで、動画教材は「道具」です。
前から学習動線上の一部に弱さを感じていて、その弱さを補うために動画教材を動線上に配置しました。
結果、学習動線が「一斉」から「個別」に変わり、「学生本位の授業」に近づけたと思っています。

もともとそのような問題意識があって動画を採り入れたんですね。

動画を活用した授業~藤澤先生の場合~

お待たせしました、藤澤先生にもおうかがいします。

お待ちしていました!

若山先生と同じく、自作の「動画教材」を遠隔授業でも対面授業でも活用しています。
私はプログラミングの授業なのですが、プログラムの書き方や演習のお題、解説など、全て動画でおこなっています。

授業の冒頭で動画のURLを案内して、見てもらいます。
その後プログラムを作り、提出が終わった人は次の動画に進んでもらう。
動画は、通常2週間先くらいまでの動画を公開していて、早い学生はどんどん先に進められるようにしています。
私がクラス全体に対して話すのは冒頭の説明だけです。

遠隔授業での冒頭シーン(おたがいさまチャンネルより)
対面授業での冒頭シーン(おたがいさまチャンネルより)

若山先生のように、授業の最初に理解度別でチーム分けするということはおこなっているのでしょうか?

それはしていないんです。
プログラミングの授業の場合、進む道は一本道なんですね。
ですので、その一本道を歩くスピードがみんな違うという。

スピードが速い学生、遅い学生とバラバラになると思うのですが、授業内でのペース調整が難しそうですね。

途中で、大きめの関門を用意しています。
速い学生には難易度の高い課題、ゆっくりの学生は軽めの課題を出して、ペースを調整するんです。
こうすることで、コマ数も範囲も同じですが、「深さ」が変わるように設計しています。
できる学生は1年生でも作品があるという状態へ進められます。

なるほど!「せっかくできる学生なのに、先に進められない」ということがなくなりそうです。
ちなみに、どんな動画教材をお使いですか?

PowerPointで作った動画を使っています。
教材をパワポ化し、授業でのしゃべりを「ナレーション録音機能」で収録、動画としてエクスポートするというものです。
授業のテンポ的にも、見やすさ的にも、板書講義の収録より断然オススメです。

パワポ化した教材に、ナレーション録音している様子(おたがいさまチャンネルより)

パワポだけで動画が作れるのはとてもいいですね。
動画編集ソフトもスキルも必要ない。

そうなんです。パワポの標準機能でできますし、簡単なんです。
教壇で話すのか、事前にパソコンに向かって話すのかの違いだけ。
しかも噛んじゃっても録り直しできますしね。
自分のベスト講義が作れます!

授業中、先生は何をしている?

お二人とも「学生が動画を使い、自身のペースで進めていく授業」という点で共通していると思います。
学生が動画を視聴し、演習などを進めている際、先生方は何をされているんですか?

何もしていません!

えっ!

驚きますよね。

授業は学生自身が進めていきますので。

もう少し丁寧に説明しますと、「巡回・見守り」「質問対応」をしています。

動画を使うことで先生の手が空き、学生も自分のタイミングで質問できます
皆の前で手を挙げるより質問しやすそうですよ。
質問がないときも、課題の進捗や解いている様子を見たりと学生個々に関わる時間を充実させられますし、授業資料の確認などもできます。

教員が教壇で全体講義をしないとなれば、複数の先生が教室の中に入ることもできます
講義は動画がしてくれる&質問には複数いる先生が対応してくれる、というのは学生にとってメリットだと思うんです。
最近は実験で、複数の先生に入ってもらっています。

複数の先生による質問対応

これは学生にとってはうれしい!

他の先生方、最初は「何をすればいいんですか?」「何もしなくていいんですよ」「へ?」って感じでした。
でもこういう授業をやってみると、「楽しい」って言いますよ。

他の先生の評価も良いんですね。

こういう授業では、不完全だとしても一度学生自身の力でアウトプットするので、質問の質が上がるんです。
さらに、全体の進捗を気にせず、目の前の学生に合わせて、踏み込んで対応していける。
どっぷり漬かれることが楽しいそうです。

「先生の役割」が変わっていく?

とはいえ、授業中に全く全体講義をせず、巡回や質問対応だけというのは、先生として不安というか、ソワソワしないものでしょうか?

最初はソワソワしますよ!
「何もしないでいい」のは誰もが恐怖なんです。
質問がなかったらもう何をしたらいいのかって。自分はいらないんじゃないかって。

教師たる者、壇上で汗水たらして話すものだと、私たちも思ってきましたしね。
それをしないなんて、サボってるんじゃないかと不安になります。

でも、私たちが本当にやるべきことは、学生について考えることなんですよね。
「講義で話すこと」のうち、多かれ少なかれ毎年同じ内容の部分があり、ルーティンワークとなっていることもあります。
動画を使えば、必ず言うべきことを忘れないし、質のブレもありません
先生という授業中の最重要リソースをルーティンワークから解放することで、学生に目を配る余裕が出ます

先生の役割が変わっていくかもしれませんね。

私、どれくらい先の未来かは分からないですが――将来的に授業は専門家じゃなくてもできるようになるのではと思ってます。

ああ、それはわかる。細分化されていきそうですよね。

先生の役割を考えるヒントになりそうです。詳しく教えてください。

今「先生」は、授業を組み立て、授業をし、相談対応をし…と、さまざまな役割を担っています。
でも、例えば「脚本家」が授業を組み立て、伝えるのがうまい「プレゼンター」が授業をし、「メンター」が相談対応をする…という風に、「先生」も能力特化の分業制になるかもしれない
ちなみに私は、プレゼンターになりたいと思っています。

私はその中だと脚本家かな。

お二人とも納得感あります!

私は特に「伝える力」を磨いています。
教師は本来、伝えることが仕事なのに、そのスキルを磨くことを忘れがちです。専門知識の量ばかりに目が行って。
以前の私がそうでした。
動画教材になると、比較対象は他の先生ではなく、芸人さんやタレントさん、YouTuberになります。
プレゼンターを目指す私は、オリラジのあっちゃんやジャパネットたかたのMC塚本さんをロールモデルにして、毎日毎日、伝え方を研究しています。

私はさらに、「ドクター」というイメージも持っています。
お医者さんは、検査結果をみて診断し、アドバイスをしたり処方箋を出したりします。
患者さんの行動変容を促すきっかけにもなります。
私たちもドクターだとしたら、「授業でしゃべる」だけではなく、授業以外の学びをサポートしたり、勉強のきっかけになるアドバイスをしたり
そういうことも大事になっていくと思います。

なるほど……お二人の取り組みは、先生の役割を根本から変えていっているのかもしれません。
さらに深くおうかがいしたいところですが、第1回はここまでにしようと思います。
ありがとうございました!
第2回以降は、お二人それぞれに、取り組み内容や経緯、苦労話などを語っていただきます。

インタビューはオンラインで実施。「普段の動画撮影時に使っている機材を見せてほしい!」というリクエストにも応えていただきました。映像のクオリティアップや機材選びについても今後の連載でお聞きしたいと思います。

▼次の記事はこちら!
【若山先生編①】始まりはコロナ禍のはるか以前。授業と教材のデジタル化を手探りで実践した足跡
【藤澤先生編①】初めて録画して見た自分の授業に愕然……一念発起「伝える力」を磨きに磨いて見えてきた「新しい先生」像

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この記事を書いた人
学校法人麻生塾 若山先生・藤澤先生

学校法人麻生塾 若山先生・藤澤先生

若山 祐紀憲
学校法人麻生塾 コンテンツ推進部
麻生塾における教育ICT活用の第一人者
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藤澤 昌聡
麻生情報ビジネス専門学校 教務部 システム開発分野 常任講師
麻生塾における映像コンテンツ授業の伝道師

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