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TOP 記事 【1】学生との距離感が分からない!

連載侑加先生のお悩み相談室

先生に特有のお悩みから、ワークライフバランス、キャリアデザインまで。「他の学校はどうなんだろう、他の先生はどう考えているんだろう……」と思ったら、学校の現場にも詳しい侑加先生に相談してみませんか?

今回は、専門学校の先生と学生の「距離感」についてのお悩みです。

専門学校では、高校や大学と比べても「面倒見のよさ」がバツグンの学校が多いですよね。

ただ、「近すぎる距離感」はトラブルや疲弊を招くことも……。

【今回のお悩み】田中先生(仮名)

IT業界から専門学校に転職して半年ほど経った、30代の講師です。

専門学校に来て驚いたのが、講師と学生の距離感の近さ。
私の学校は少人数クラス担任制の面倒見のよさが特長で、たしかに国家試験の合格率や就職率も高く、「勉強の習慣のない状態で入学した学生も成長できる」とありがたい評判も頂いているのですが、時々あまりの親密さにヒヤヒヤすることがあります。

講師と学生がLINEを交換しているのは当たり前で、SNSでも学生と繋がっている先生もいます。
学生同士の関係性や卒業生の就職後の様子などが見られるのがいい、というのは分かるのですが、自分としては20歳前後の学生たちと友達のように仲良くすることに抵抗を感じます。
先生たちの良心を信じてはいますが、例えばもし女子学生と不適切な関係を持とうとする人がいたら……と思うと、すごくリスクだと思います。
かといって同性の学生と異性の学生で接し方を変えてサポート体制に差がついてしまってはいけませんし……。

LINEでつながっていることで試験勉強についての質問をしてもらいやすかったり、インターン先でのトラブルなどをすぐに報告してもらえたりと、メリットもありますから、一律にやめたほうがいいとも思わないのですが……。

「密室」のコミュニケーションは避けたい

【侑加先生の回答】

田中先生は、IT業界から専門学校へいらっしゃったのですね。
実は、私も一般企業へ勤務した後、専門学校へ転職しました。
新卒で一般企業に就職したので、専門学校では驚きの連続でした!

「学生との距離の近さ」には、確かに戸惑いました。

25歳の時、公務員コース2年のクラス担任を務めました。
全員が男子学生で、20歳です。
前年までは女子学生ばかりのクラス担任でしたので、新しいチャレンジでした。
また、いきなり卒業年次を担任するということは、公務員合格に導き、卒業までを見守ることであり、自分に務まるかと緊張もしていました。

上司(男性)は、1年次の担任で、教務課長。
「教室は、階段を上がってすぐの部屋を割り当てた」こと、「なるべくドアを開けておくように」と、まずこの2点を伝えられました。
前年までの女子クラスでは、廊下奥の部屋で、ドアの開閉など注意を受けたことがありませんでしたから、「なぜ!?」と驚きました。
何だか指導力不足を指摘されたようで、張り切っていた私は不愉快にも感じました。
教室のドアは、ガラスの無いものでしたから、なるべく廊下を行き交う人の目に触れるようにという意図があるのは分かりました。

上司は定時制高校に長く務めたベテランでしたので、色々なケースを経験されたのでしょう。
密室を作らない」という配慮をしてくれたのだなと今では思います。

他者から見えない、お互いに逃げ場のない空間という意味での「密室」は、教室だけに限りません。
LINEやSNSなどでも「密室」は生じます。
さらに、LINEやSNSの場合、時間制限のない密室になりえます。

田中先生が心配なさるように、「女子学生と不適切な関係を持とうとする人」も出てくるかもしれません。
また、大人で教員という強い立場と子供で学生という弱い立場の間では、セクシャルなもの以外にもさまざまな問題が起こりえますね。

※少し本筋から逸れますが、性に関しても、必ずしも男女の組み合わせとも限らないというのは認識しておきたいところです。先入観があると問題の見落としに繋がるほか、無意識に人を傷つけてしまうかもしれません。一人一人の幸せを願う教育の場では特に、性の多様性への認識を大切にしたいですね。

最近も、高校で最悪の事態に至ったニュースがありました。

[読売新聞オンライン]夜中まで主将にLINE連絡の顧問、高2自殺の前日は興奮状態で叱責…「最後の引き金」か (2021年3月25日閲覧)

LINEでのやり取り以外にも問題があったとはいえ、他者から見えない「密室」状態で24時間繋がっているということが事態の悪化を招いた面は大きいと思います。

また、これほど苛烈なものでなくても、LINEなどのすぐに送信できてしまうメッセージツールでは、感情的になって書いた文をついそのまま送ってしまいやすいという点は、誰もが気を付けなければなりませんね。
インターネットが普及する以前には、手紙を書いたものでした。
手紙なら、書いてから相手の目に触れるまでに時間がありますから、その間にハッと我に返ることもありました。
「夜中に書いた手紙は、朝、読み返して投函する」とマナー本にも注意書きがあるくらいです。
熱すぎる気持ちを文字にしたものを冷静に読んでみると、恥ずかしかったり、恐ろしかったり…。
即時性はメッセージツールの便利なところでもありますが、「今、冷静じゃないかも」と思ったら少し時間を置くようにしたいですね。

「24時間対応可能」は先生の過重労働にもつながる ブラックでない職場を学生に見せることの大切さ

また、個別対応をしている現状では、先生方にとって、過重労働になっていないでしょうか。

専門学校は、多くの学生にとって最後の学校であり、社会人になっていく重要な分岐点です。
本音では「働きたくない、いつまでも遊んでいたいな」と思っている学生もいますよね。

身近で「働く社会人の先輩」を見るのが専門学校です。

「田中先生のように、IT業界でバリバリ働きたい」
「私も専門学校の先生になりたいな」
など、働くことに希望を持たせられる環境が理想だと思います。

自分の居場所である専門学校が、ブラックでない労務管理もきちんとされた職場であることを、学生達は望んでいます。
生き生きと働く先生方に、学生は憧れるのです。

学校全体で指針を作って透明性を

学校全体で、学生とのコミュニケーションにおける指針作りをされてはいかがでしょうか。
対面でもSNSでも、講師と学生が1対1になることは、やはり避けるべきです。
一人の先生が始めると収拾がつかなくなりますし、学生や保護者の中に不公平感が蔓延してからでは、先生や学校の信頼を取り戻すことが難しくなります。

保護者にとっても「きちんとした指針があった上で、面倒見の良い学校」が理想

高校生の母親だった時代、スマホを持つようになった我が子の様子を、やはり心配しました。
地域や学校で取り決めがあったので、親としても注意しやすかった経験があります。
親の世代では考えられなかった人との繋がり方があり、事件も多く起きています。

保護者としては、「きちんとした指針があった上で、面倒見が良い学校」が理想です。
心身の安全を第一に考えてくれ、リスク管理もされている学校に、子どもを託したいのです。

「試験勉強の質問」や「インターン先でのトラブル」をすぐに受け付ける方法の確立を

田中先生は、LINEで繋がるメリットを具体的に2点挙げてくださいました。
確かに便利ですよね。

これらのフォローを個別のLINE以外の方法ではできないでしょうか。

先生も突然の体調不良で欠勤する日もあるでしょうし、学生も同様です。

先生が一人で抱え込まなくて済むように、グループ化することも一案かもしれません。
教務、事務スタッフが一丸となって、学生のサポート体制を整えたいです。

それに、学生の自立と成長を促すという点でも、少し距離を置いたほうがいいということもあります。

若い世代には電話が苦手という子も多いですが、就職活動や入社後は、やはり電話応対も必要です。
企業の方もよくご存知で、就活も後半になると、電話を掛ける・受ける機会を作り、コミュニケーションスキルを確認したりします。
学生は、先生を頼らず、自分の力で困難を乗り越えていかなければならなくなります。

サポート体制を整えたうえで、一人一人の奮闘を期待し、時に小さなミスも経験させながら、見守り、応援していきたいですね。

田中先生のように異業種の経験をお持ちの先生の視点は、新鮮で、現場改善につながることが多いです。
今回のお話は、できれば専門学校業界全体で考えてみたいですよね。
貴重なご相談をいただき、本当にありがとうございました。

この記事を書いた人
侑加先生

侑加先生

一般企業を経て、専門学校に正教員として勤務。
現在は、企業・大学講師、小中学生の塾経営。
趣味は、お笑いと高校野球、旅行。一児の母。

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