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TOP教養スキルアップ失敗しない1on1のやり方!学生の不安をすっきり解消する方法

失敗しない1on1のやり方!学生の不安をすっきり解消する方法

2023.06.23 (最終更新:2024.03.27) スキルアップ 教務情報

2023年5月8日、新型コロナウィルスの感染症法上の分類が5類に移行しました。教育現場は従来の対面授業にほぼ戻っているかと思います。ところが、ここにきてコロナ禍の後遺症、とりわけ心の不調に苦しむ学生の存在を耳にすることが少なくありません。人知れず悩みを持ち、孤立している学生と現場の先生はどう向き合ったらよいのでしょう

そこで本記事では、学生が抱える問題や課題を整理し、不安の解消や効果的な面談方法についてご紹介したいと思います。

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グッドサイクルを回す

漫画「ドラえもん」の登場人物、野比のび太のママ(野比玉子)。皆さんはママのセリフで思い出すものはなんでしょうか?「のび太、またこんな点数を取って!」でしょうか。それとも「宿題をやったの、早くやりなさい!」でしょうか。

いずれにしても、のび太の心には届いていないため「うるさいなぁ」で終わってしまい、ことあるごとに同じセリフを繰り返すことになります。

この残念な出来事はなぜ繰り返されるのでしょうか?マサチューセッツ工科大学のD.キム元教授の成功循環モデル(図)をもとに考えてみましょう。

【図 成功循環モデル D.Kim】
グッドサイクルは①からスタート バッドサイクルは④からスタート

この成功循環モデルでは、残念な結果につながるバッドサイクル良い結果につながるグッドサイクルという2つの循環があるとしています。

バッドサイクルでは、まず「結果」に焦点を当てます。ママのセリフそのものです。すると「関係の質」が悪化します。のび太はママが嫌なことを強いる人、欲望を妨げる人として認識します。

その結果、「思考の質」と「行動の質」も劣化するためますます残念な結果になります。のび太でいえば「宿題をやろう」ではなく「いかにママの目を逃れるか」を考え、「ますます行動しなくなる」といった具合です。

では、どうすればよいのでしょうか?その答えは「結果」ではなく「関係の質」からスタートすることにあります。ママが「将来、あなたが幸せになっている姿を想像してみて。そこに勉強をすることがどのようにつながっているのかしら?」と良質な「?」をプレゼントしたとしましょう。するとのび太は考えるはずです。

そして勉強の意味を自分なりに見出し、勢い余って勉強に楽しさを覚えた日にはママとの関係が変わります。ママは自分に有益なヒントをくれる人、自分のために寄り添ってくれる人になるのです。つまり「思考の質」と「行動の質」も変わるため、結果もおのずとついてくることになります。これをグッドサイクルといいます。

1on1のメリットと失敗する理由

1on1を行うメリットはどこにあるのか、と問われることがよくあります。前回ご紹介した学生のように不安を解消することはその1つです。それだけではなく主体性を育み、成長につなげることも可能です。グッドサイクルを、1on1を通じて回していくのです。

しかし、すでに導入している組織でうまくいっているかといえば必ずしもそうではありません。原因は色々と考えられますが、私はその1つに「関係の質」へのアプローチがうまくいっていないのではないか、とみています。

企業のなかで1on1を行う場合、上司が部下と面談をします。このとき、上司は普段の関係性を引きずって臨んでしまうことがあります。つまり、正解を教える人、評価をする人として部下と相対してしまうのです。当然のことながら部下は防御的になります。面談を上司のご機嫌をとりながらやり過ごそうとするのです。これではうまくいきません。

そうではなく、整理のつかないガス状の頭の中の思考や心の奥にひっそりと隠れている言葉が出てくるのを支援する人として臨むのです。前回にご紹介した仙台育成の野球部、須江航監督はいみじくも「監督は『仲間』みたいな感覚で選手と接していかなきゃいけない気がしています」とおっしゃっています。

1on1の実践ポイント

ここまで1on1では「関係の質」が重要で、そのために面談者がその存在のあり様、すなわち適切なBe(何者として面談に臨むか)を意図的に選んでいくことがうまくいく秘訣であることを述べてきました。

最後に、どのように面談を進めればよいのかDoについてもみていきましょう。重要となる点に絞りながらご紹介していきます。

【ポイント1】いきなり本題に入らない

何か話したいことある?といきなり聞かれても生徒、学生としては答えづらいもの。信頼関係が十分に構築できていないときはなおさらです。最初は「最近はどんなことがあったの?」といった近況を聞くようなところから始めるとよいでしょう。

【ポイント2】成果を求めない

役に立ちたいと思うあまり矢継ぎ早に質問をする、期待した回答が出てこないと先回りして言葉を補う、といった面談者の方もいらっしゃいます。これでは「結果」にフォーカスしていることと同じになってしまいます。相手のペースに合わせ、この面談で期待する進捗がなくても次回に繰り越せばよい、くらいの心持ちでいると、むしろ良い結果につながります。

【ポイント3】良質な「?」をプレゼントする

人は「?」を持つことで自ら考え、その先に気づきを得ることができます。教えるのではなく、考えや気持ちを整理し、言葉として現れるよう「?」をプレゼントします。相手がすぐに答えられず熟考するような「?」は良質といえるでしょう。

■参考
生産性新聞:「すすめ、組織開発」栗林 裕也(2019)
文藝春秋:「甲子園名将対談 中谷仁×須江航 Z世代との向き合い方」Number#1072(2023)

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本記事を寄稿してくださった、公益財団法人 日本生産性本部 栗林裕也先生が「実践行動学Webセミナー」にて基調講演講師として登壇されます。

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この記事を書いた人
栗林 裕也

栗林 裕也

公益財団法人日本生産性本部人材・組織開発コンサルタント
国家資格キャリアコンサルタント
白百合女子大学非常勤講師
早稲田大学政治経済学部卒業後、鉄道会社を経て現職。キャリア分野の研究や企業内でのコンサルティング、能力開発の研修に従事。生きがいと働きがいを感じつつ、その人らしさの発揮が強みとなって現れ、目的を達成することができるよう、「人」と「組織」の支援を行っている。

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