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【若山先生編①】始まりはコロナ禍のはるか以前。授業と教材のデジタル化を手探りで実践した足跡

2022.04.20 記事 教務情報

連載麻生塾に聞く!教育ICT活用

九州最大級の総合専門学校グループ「学校法人 麻生塾」の教育ICT活用について、牽引役である若山先生・藤澤先生にお聞きする注目の連載。「コロナ禍の緊急対応」に留まらない中長期的な取り組みの展望から、大きな組織での情報共有とプロジェクト推進の秘訣、すぐに真似したいテクニックまで、貴重な知見を惜しみなくお伝えします。

▼ウイナレッジ編集部より

麻生塾グループの教育ICT活用のキーパーソンお二人をお迎えしてお届けする連載「麻生塾に聞く!教育ICT活用」。
第1回はイントロダクションとして、若山先生・藤澤先生へのインタビューでお二人の取り組みの概観についてお聞きしました。
今回からは若山先生・藤澤先生それぞれに執筆いただいた記事をお届けします。

若山先生の第1回は、「ビフォー・コロナ」から取り組んでこられたデジタル化実践について。
なんと始まりは2013年です。
コロナ禍であらゆる教育の場が急激なデジタル化の波に晒されるはるか以前からの取り組みで若山先生が考え、実践し、検証してきたプロセスは、デジタル化、教育ICT活用の本質に立ち返るための示唆に満ちています。
どうぞお楽しみください!

YouTubeとの出会い

始まりは2013年2月頃にさかのぼります。

面接風景を学生に見せられれば客観的な指導がしやすくなる。面接風景を動画に記録したい

と考えていました。
しかし、それを実践しようと思うと、動画の置き場所、学生への共有方法として、いくつかクリアしなければならない条件が浮かびあがりました。

  • 動画データを大量に保存できる
  • オンラインでデータ共有できる
  • 無料でできる

そんな夢のようなサービスをあれこれ探しているところに上司が教えてくれたのがYouTubeでした。
これを機に、一気に虜になります。

始まりは「ラクができるかも」という不純?な動機から

当時私が授業していた学科は1学年6クラス編成でしたので、同じ内容の授業を6回やる必要がありました。
授業はやむを得ないと考えていたものの、問題は学生個々の質問対応
6クラス分の質問が発生するので、時には、6度同じ質問が来ることも
「これはやっていられない、何とかならないか」と頭を悩ませました。

このとき感じていたのが、学習動線の弱さです。

「学生一人一人の理解力は違うのに、同じタイミングと量でクラス全体に一斉に解説するからこうなる」
「授業で話している事を記録しておけば、学生それぞれが繰り返し見ることができ、質問が減るはず」
「そうすればラクができる!」

と考えました。

動画の保存場所、共有方法は、前述の経験よりYouTubeで決まり。
後はそれをどうやって見せるか――まず考えたのは「学生は、これをいつ見たいと思うんだろう?」ということ。
仮説を立ててみました。

学生が教員に質問しに来るまでの過程が

①自学自習中、授業中の設問を解いている時に「分からんっ!」となる
②「先生に聞きに行こう」と思う
③教員に質問する

という流れだとして、②の時にその動画があれば良さそうです。
それならば、設問の近くから動画にアクセスできれば良さそう
それならば、YouTubeの動画URLをQRコード化して設問のすぐ近くに貼っておけば良さそう

当時、麻生公務員専門学校福岡校では、簡単ですが自前でテキストを作成していました。
また、QRコードが簡単に作れることは知っていたので、「作ったQRコードを設問の近くに貼る」のはそれほど難しいことではないように思いました。

💡すぐデキPoint
その動画いつ見てもらうつもりですか?
それによって動画の保存場所動線が決まる

早速行動に移します。まずは授業の撮影から始めました。
当時スマートフォンはありましたが、この動画の撮影機材としてスマートフォンを使うことは思いつきませんでしたので、学校備品のホームビデオカメラを使いました。

学生さんに趣旨を説明し、机の間に三脚を立てさせてもらいました。
学生さんに協力してもらったことがもう一つ。
設問の近くにQRコードを貼り付けるので、「1設問ごとに動画が必要」です。
授業全体を通しで撮るのではなく、設問ごとに分けて撮りたい――そこで、設問解説ごとに学生さんに「録画開始」「録画停止」ボタンを押してもらいました。
コツコツ撮った数、約300本。

💡すぐデキPoint
動画は細かく区切る

撮影が終わる度に、

①ビデオカメラからパソコンへの動画データの取り込み
②動画データのYouTubeアップロード
③YouTube動画URLのQRコード化
④QRコードの自前テキストへの貼り付け

と地味な作業が続きましたが、何とか完成。
これで、“いつでも”“どこでも”“何度でも”個人のペースで授業内容を振り返ることができるようになり、学習動線が「一斉」から「個別」に変化。
学生からも中々好評で、同じ質問を繰り返し受けるということが減りました。

▲設問ごとに解説動画のQRコードをつけたテキスト

スタディサプリに出演して気づいたこと

2014年頃、それまでの動画教材への取り組みとは関係ないのですが、依頼を受けてスタディサプリに出演しました。

その後しばらく経って、高校の先生から「スタディサプリって、見るだけだから飽きちゃうんですよねぇ」というお話を聞きました。
よく考えると当たり前の話で、普段の授業でも教員の話を聞くだけだと寝てしまうのと同じですね。
ここで、動画を見せるだけではなく、関連する課題をこなしてもらうことが重要だと気づきました。

💡すぐデキPoint
見る・聞く+手・頭・体を動かす

教材制作の部門へ異動して気づいたこと

2017年、麻生グループ企業の「株式会社麻生キャリアサポート」に異動し、教材作成(公務員試験対策用)に携わることになりました。

まず、出題傾向などの分析や教材原稿作成のため、約20,000問の過去問データベースを構築しました。
また、自らの授業を振り返ってみて、設問の解説には必ずその前提となる知識の説明(解法や考え方、背景など)が伴うことに改めて気づきました。
そして、よく考えてみれば自分の授業は以下の図のような構造になっていて、「ある前提知識を使う設問とその解説のまとまり」を授業中にいくつか扱う形をとっていることがわかってきました。

そして、この「前提知識の説明」も動画化すれば、自分の授業の構成要素を全てデジタル化できるのではないか、つまり「授業のデジタル化」ができるのではないか、と考えるに至りました。

デジタル化を実践して見えてきた動画教材のパターンと特徴

結果、1年ほどの教材作成の過程で、

設問解説:約1,150本(内650本は自ら)
設問:約20,000問分のデータベース
前提知識の説明:約150本

を作成しました。
同時に、自分の担当科目分の「授業のデジタル化」が一応完了したことに。

実際にデジタル化を進める中で、「動画のパターン」がいくつか生まれ、それぞれの強み・弱みも見えてきました。

動画のパターン①オーソドックス

まず一つ目のパターンは、教員が板書しながら解説するのを映すオーソドックスなものです。

「オーソドックス」の強み

  • 見慣れた形式で親しみやすい
  • 教員の顔が映るため、初学段階等の心を掴みたい場面で活用

「オーソドックス」の弱み

  • 撮影場所が必要
  • 撮影コストがそれなりにかかるため量産しにくい

動画のパターン②PowerPoint投影+手書きによる書き込み

二つ目のパターンは、PowerPointのスライドを投影し、スライドに書き込みをしながら解説するのを映すもの。

「PowerPoint投影」の強み

  • スライドに書き込みながら話すため、動きがある映像になり飽きにくく、かつ、板書を待たなくてよい
  • アニメーション次第で複雑な動きなども視覚化できる

「PowerPoint投影」の弱み

  • 機材セッティングなど撮影にノウハウが必要
  • 撮影場所が必要
  • PowerPointが必要

動画のパターン③手元のみ

三つ目のパターンは、設問の載った紙面と解説しながら書き込む教員の手元だけを映すもの。

「手元のみ」の強み

  • 撮影スタジオなど不要で量産
  • 学習がある程度進んだ段階での学習時に活用

「手元のみ」の弱み

  • 顔が映らないため、心を掴みたい場面などには不向き

見えてきたこと、まだ見えていなかったこと

とにかく仮説を立て、検証をし……の繰り返しで授業と教材のデジタル化を進める中で、動画のパターンなど見えてきたこともあれば、この頃にはまだ見えていなかったものもありました。

そもそものデジタル化の明確な目的や使い道が見えていたわけではなく、「デジタル化しておけば、誰かと共有、保存、蓄積、編集、反復視聴、LMSへの格納、集計、分析、自動化、最適化……などなど、後々柔軟に対応できて楽だろう」というくらいの見通しでした。

さらなるデジタルツール活用の夢が膨らむ中、コロナ禍を迎えることに

ここまで動画や過去問データベースを中心にデジタル化をしてきましたが、さらに色々なツールを使えばまだまだ教育の質を向上させる余地があるのではないかと考えるようになりました。

例えば、デジタルの強みである「数値化のしやすさ」「フィードバックの速さ」に着目し、「Googleフォームなどのアンケートツールに格納した設問を授業中に配信し、その場で正答率を見ながら正答率の低い設問を中心に解説したら、学生の満足度と学習効果が上がって面白いかも」と思いつきました。
また、正答率が高い設問は比較的簡単ということですから、授業内で解説をしなくとも、解説動画を見るだけで十分理解できるのではないか、そして正答率の高い設問の解説を動画に任せてしまえれば、正答率の低い設問、学生がつまずいている設問の解説に時間をかけることができ、よりメリハリのある授業ができるのではないか、とも思いました。

従来のプリントを使った問題演習では、全員分の回答をその場で採点するのはほぼ不可能でした。
まして、その結果にあわせて授業の構成を最適化させるなどということはありえませんでした。

このままさらにデジタル化を進めていけば、今までは考えられなかったようなことができるようになるだろうと夢が膨らんでいきます。
ただ、なかなか実践の機会は少なく時が過ぎ、新型コロナウイルス感染症の拡大が始まります。

▼ウイナレッジ編集部より

若山先生の第1回は、2013年頃からの授業と教材のデジタル化の取り組みについて執筆いただきました。
今やYouTubeは従来のメディアを席巻する勢いの映像プラットフォームとなり、書籍にQRコードが掲載されているのも珍しいことではなくなりましたが、2013年を思い出すと、若山先生の取り組みの先進性は驚くべきものだと感じます。

ビフォー・コロナから専門学校の教壇、スタディサプリ、教材制作とさまざまな場でデジタル化を進めてきた若山先生。
次回は、コロナ禍を迎え、急激な変化の中で奮闘された記録をお届けします。

次の記事はこちら!
【若山先生編②】コロナ禍、緊急対応に留まらない授業の質向上を志向した教育ICT活用実践
【藤澤先生編②】教師の「個の力」を磨く時代が来た!すぐに真似したい教師力アップの手法

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この記事を書いた人
若山祐紀憲先生

若山祐紀憲先生

学校法人麻生塾 コンテンツ推進部
麻生塾における教育ICT活用の第一人者。
専門は、公務員試験における「判断推理」「数的推理」「資料解釈」など。
麻生公務員専門学校福岡校にて教鞭をとっていたころ、面接指導がきっかけでYouTubeなどの映像配信プラットフォームに関心を持ちはじめる。2013年にホームビデオカメラから始まった授業・教材の映像化は徐々に成果につながり、株式会社麻生キャリアサポートでのICT活用教材の作成・販売へと活躍の場が広がっていく。
2020年、コロナ禍に入ると、グループ内の「遠隔授業の支援」を使命に学校法人麻生塾 教育推進部へ異動。長年の映像教育の経験を活かし、同塾内のICT教育活用を推進するとともに、自らも教鞭をとり、ICT教育活用の実践と仕組み作りに邁進。
2022年4月より現職。麻生塾グループ開発の教育プラットフォーム「Teachare」の開発・普及に取り組む。

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