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学習意欲を高める「ARCSモデル」とは【特別編 第4回】

2023.10.24 (最終更新:2024.03.27) その他 教務情報

連載大原先生の学生指導のすゝめ

動機づけ教育プログラム「実践行動学」を開発する「実践行動学研究所」大原専務理事の学生指導のすゝめ。 学習塾での指導歴25年の大原先生が、実例を用いて学生への接し方をお伝えするシリーズです。 テンポのよいユニークな文章は、一度読んだらハマること間違いなし。

本連載の執筆者である大原先生が専務理事を務める「実践行動学研究所」のセミナーでは、動機付けに関する講演を行っています。

この度、その講師である法政大学キャリアデザイン学部教授廣川進様より寄稿していただいた記事を2本連続(特別編第3回・第4回)で掲載いたします。

特別編第4回では、「学習意欲を高める『ARCSモデル』とは」というタイトルで、学生の学習意欲を高める授業上での工夫などについて、ARCSモデルに基づくアイデアをご紹介します。

前回記事:Withコロナ時代の学生への動機付けのヒント【特別編 第3回】

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ARCS(アークス)モデルとは

ARCS(アークス)モデルとは、米国の教育工学者のジョン・ケラーが1983年に提唱した学習意欲を高めるためのモデルです。

学習者のモチベーション向上のために指導者が取るべき行動を「注意喚起(Attention)」「関連性(Relevance)」「自信(Confidence)」「満足感(Satisfaction)」の4側面に分類しました。4側面の頭文字を取ってARCSモデルと名付けられました。動機付けに関する心理学の理論や現場実践を総合して、具体的で実践的な方法だと思います。

ここでみなさんに質問です。

  • 自分の授業の「魅力」はどこにあると思いますか?
  • 授業を魅力的にするために、ふだんどんな工夫をしていますか?

ARCSモデルを使って、例えば「環境問題」についての授業をやるとしましょう。アイデアの具体例を以下に記載します。

1)Attention 注意喚起:おや、おもしろそう、なぜだろう

  • 印象的な写真や映像を見せる。(例)美しい自然景観、野生動物、環境汚染、森林伐採、海洋ごみなどのテーマのビジュアルを見せる。
  • 象徴的な具体物を見せる。(例)ディーゼル車の排ガス問題を伝えるために黒いススのペットボトルを見せる。
  • 環境問題についての簡単なクイズを出して、意外な結果に驚かせる。
  • 統計データを紹介して問題の重要性に気づかせる。
  • 環境保護に携わっているNPOのメンバーなどをゲストスピーカーとして招き、その経験や思いを語ってもらう。

2)Relevance 関連性:やりがいありそう 

  • 今回のテーマとこれまで学習してきた事項や得意な分野とのつながりを示す。
  • このテーマについて学ぶことで、どんなことが得られるのか。効能、評価、報酬。(例)授業参観で地域の人達の前で発表して認められる。
  • 今回のテーマが身近な生活、自分たちの未来とどう関わってくるのか具体例をあげる。(例)大気汚染で洗濯物が汚れる。南極の氷が解けると・・・。
  • グループ討議、身近に感じる環境問題の現象を一人ずつ発表し、それが彼らのコミュニティにどんな影響が及ぶのかを考えさせる。
  • 自分が興味をもった環境問題に関連する特定のトピックを絞り込んで、自分で調べてレポートを書く。

3)Confidence 自信:やればできそう 

  • レポートをみんなの前で発表する場を設定し、場馴れさせ自信をつける。
  • レポートを書くにあたり、調べる方法をいくつか提示して、自分ができそうな方法を選ばせる。(例)図書館で参考書を探す。司書の先生に相談する。ネットで検索、身近な人にインタビューする。

4)Satisfaction 満足度:やってよかった 

  • 環境問題について調べた成果を授業参観や文化祭などで発表する機会を設ける。その努力や成果について生徒・学生同士、教師、親もポジティブなフィードバックを行って、学習体験の満足した経験として定着させる。自己効力感を高める。
  • 地域社会で認められる経験につなげる。違うテーマについても、今回の方法論で応用が効くことを気づかせる。

終わりに

今、行っている授業に上記のようなARCSモデルの観点が入っているかどうかをチェックして、何か付け加えるアイデアを試してみて、生徒や学生の反応を見てみるのもいいのではないでしょうか。

参考文献
ジョン・M. ケラー『学習意欲をデザインする: ARCSモデルによるインストラクショナルデザイン』(北大路書房、2010年)
鈴木 克明『インストラクショナルデザインの道具箱101』北大路書房、2016年)

▼ウイナレッジ編集部からのお知らせ

本記事を寄稿してくださった法政大学 廣川教授が、「実践行動学Webセミナー」にて基調講演講師として登壇されます。

実践行動学は、学生の夢の実現、目標達成に必要な「心のあり方」と「達成のスキル(技能)」を身につけることを目的とした、動機付け教育プログラムです。ぜひこの機会にご参加ください。

【実践行動学Webセミナー】
・基調講演タイトル:Withコロナ時代の学生への動機付け~モチベーション向上を目指して~(法政大学 教授 廣川進様)
・日にち:10月26日(木)および11月20日(月)
・会場:オンライン会場(Zoom)
・主催:一般社団法人 実践行動学研究所
・参加費:無料

詳細はこちら

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この記事を書いた人
廣川 進

廣川 進

法政大学 キャリアデザイン学部 教授(公認心理師・臨床心理士・文学博士)。
1959年生まれ。慶應義塾大学文学部卒業後、株式会社ベネッセホールディングスにて、雑誌編集(『ひよこクラブ』の創刊等)の傍ら、大正大学大学院臨床心理学専攻修士・博士課程を修了。2001年退社後、大正大学心理社会学部臨床心理学科教授を経て現職。

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