大きく変わった学生の就活事情 | 対面からオンライン面接へ ~今どきの就活とは~
連載withコロナ・afterコロナの就職活動最前線
2020年、新型コロナウイルス感染症の拡大によって一変した就職活動。翻弄された学生たちや特に多大な影響を受けた業界の様子、afterコロナに向けた展望まで、就活支援や企業の社員研修に精通した川口先生が最前線からレポートします。
今回から始まる連載「withコロナ・afterコロナの就職活動最前線」を担当します、川口晴美と申します。
現在、大学・専門学校・高校で、非常勤講師として学生たちに関わっております。
就活の「今」を、現場からお伝えできればと存じます。
どうぞよろしくお願いいたします。
各地で桜満開の便りを聞く季節となりました。
それは別れと出会いのシーズンでもあります。
講師になって16年。
今年、巣立っていった卒業生には、特別な思いがありました。
コロナ前とコロナ後を体験した学生たちだからです。
目次
2020年の就活生(2021年新卒) 夢への道を絶たれても
2020年、3月。
特に、航空業界を目指して日々奮闘していた学生たちにとって、新型コロナウイルス感染症の感染拡大は、悪夢のような出来事が襲ってきたと言っても過言ではありませんでした。
エントリーシートや自己PR動画を送った直後での採用中止が相次ぎ、いざ就活本番というときに夢を絶たれたのです。
今までの努力を発揮する場であるはずの採用試験が目の前でなくなる。
挑戦する機会すら与えられない。
どれほど無念だったかはかり知れません。
それでも悲しんでばかりもいられません。
業界変更を余儀なくされ、慣れないオンラインでの面接に戸惑いながらもなんとか内定までこぎつけ、激動の就活を終えたのです。
2021年、3月。
雲一つない晴れやかな日、卒業を迎えました。いつか夢が叶うチャンスが、必ずくることを願わずにはいられませんでした。
2021年の就活生(2022年新卒) 一変した光景
時を同じくして、2022年新卒の就活が解禁となりました。
昨年の学生に比べると覚悟ができている分、オンラインでの準備も心得ていますが、実際に始まるとコロナ禍での就活の大変さを実感する学生も多いのではないでしょうか。
キャリアセンターの異変
先日、大学のキャリアセンターに足を運びました。
コロナ前は、エントリーシートの添削、面接、相談などの予約をとるため、9時開始のキャリアセンター前に長蛇の列ができ、センター内は面接練習や添削をしてもらう学生でごった返していたものでした。
しかし、そのあたりまえの就活の光景が、1年前からなくなったのです。
それはキャリアセンターに限ったことではありません。
リクルートスーツに身を包んで街を歩く学生、遠方の会社説明会や面接に向かうため夜行バスに乗る学生をよく見かけたものですが、今は説明会からインターンシップまですべてオンラインに変わりしました。
現在も学内は閑散として、学生の姿をチラホラ見かける程度です。
今はどこの大学もキャリアセンターでの相談をWEBで予約できるようになっていますが、予約開始と同時に5分で満席です。
「コンサートチケットの売り出しかと思うほど殺到する」とセンター長が話していました。
ガランとしたキャリアセンターに入ると、パソコンの画面越しに大きな声で話をしているスタッフが数人、オンラインでの面接練習をしていました。
この光景が日常になりつつあるのが、怖いと思ってしまいます。
昨年は授業もほとんどオンラインでした。
学内の活動も、海外留学も、アルバイトさえも経験できずに終わった学生が多いのです。
今まであたりまえに過ごしてきた学生生活が送れない――そのため、コミュニケーションが上手く取れない、伝えたいことが上手く伝えられない学生が例年になく多いと、センター長が嘆いていらっしゃいました。
「ガクチカ」が書けない コロナ禍の学校生活をどう過ごす?
この1年、本来得られたはずの体験、経験を奪われてしまった学生たちが、ガクチカ(「学生時代に力を入れたこと」を省略して呼んでいる言葉)を全く書けずにいるのを目のあたりにしました。
特に専門学校1年生での就活の場合、行事が全てキャンセルされましたから、ガクチカが書けないのです。
そのような状態でも「自分でできることは何か」を意識して過ごしてきた学生の中には、入学時にTOEIC330点だったのを就活までのわずか半年間で630点にまでアップした学生や、国家資格に挑戦した学生もいました。
このような不運な状況に置かれて、そのように前向きになれないという学生を責めることはできませんが、なんとか前を向いて工夫できた学生が強い1年間でした。
距離に縛られないメリットも
ただ、WEBになって悪いことばかりではありません。
学生に聞いてみると、説明会や面接もオンラインなら会場に行くまでの旅費・交通費がかからないという利点があげられます。
「気軽にさまざまな会社にエントリーしやすくなった」「海外や国内の遠方の試験が受けやすくなった」「時間を有効活用できる」などの声もあります。
あるデータでは、昨年、「最終面接前までWEB面接、最終面接のみ対面」とした大手・中堅企業が43.6%、「全てWEB面接」が34.6%、合計で8割がオンラインであったそうです。
また、今年はさらにオンライン化が進むともいわれています。
対面からオンラインへ。
コロナ禍はまだまだ続きます。
困難な状況下でも工夫して何事にもチャレンジする力、変化に対応できる力を備えることが、厳しい就職戦線を生き抜く鍵となるのではないかと思います。
ひとりじゃない
最後に、コロナ前とコロナ後の一番の違いは、今まで友人や仲間と共に励まし合って困難を乗り越えられたのが、学生生活がオンラインになったことで、落ち込んだとき励まし合うのが難しくなったことです。
孤独にさいなまれてしまうことも多々あったと多くの学生から聞きました。
しかし、全ての就活生に「ひとりじゃない。」ことを伝えたいと思います。
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川口 晴美
元日本航空グランドスタッフ。在職14年の間、JAL「サービスの達人」社長賞や社内接客大賞「ホスピタリティ賞」受賞。全国各地の空港で指導教官として勤務。退職後、大学、専門学校の非常勤講師として客室乗務員やグランドスタッフを多数輩出。現在は、大学、専門学校(医療系、留学生)高校、NHK文化センターで教える。
オフィス川口(G-mother)を設立し、学生の就活サポート、各種検定、企業研修を手掛ける。サーティファイ認定会場。