連載withコロナ・afterコロナの就職活動最前線
2020年、新型コロナウイルス感染症の拡大によって一変した就職活動。翻弄された学生たちや特に多大な影響を受けた業界の様子、afterコロナに向けた展望まで、就活支援や企業の社員研修に精通した川口先生が最前線からレポートします。
皆さん、こんにちは。
新緑の5月。
新入生が入学し、学校生活にも慣れてきた矢先に非常事態宣言で全面オンライン授業に変更という学校も多いのではないでしょうか。
また、3月から始まった2022年新卒の就活も、業界によっては内定が出ている時期でもありますが、これから始まる業界もあります。
2022年新卒の採用選考では、多くの企業がオンラインで対応しています。
2020年の新型コロナウイルス感染症の拡大を受けて急激に広がったオンライン面接・オンライン就活。
従来の面接・就活とは勝手の違うことばかりで、学校も学生も大慌てでの対応を強いられたことと思います。
今回は、オンライン就活で気をつけるべきことについて、私が現場で目にした二つのエピソードをもとに述べていきたいと思います。
目次
誰にでも起こりうる通信・機器トラブル。トラブルを起こさないための準備では足りない
オンライン面接で最も気を付けること、それは「通信回線の不安定さ」から起こるトラブルです。
自宅のWi-Fi環境が悪いため、学校のキャリアセンターでオンライン面接を受験した学生のお話をします。
自宅の通信環境を確認し、キャリアセンターを使う選択をする――ここまではよい準備だったと思います。
しかし……
その学生の第一志望企業の面接が行われた日。
電話を受け、出てみると、
「先生、ダメだった……」
その学生は泣いていました。
いったい何が起きたのか、つらい気持ちで状況を聞きました。
面接前に確認したときには、通信状態、PC、カメラ、マイク等問題なく、音声もバッチリ聞こえる状態だったそうです。
そして迎えた本番。
試験官2名、受験者3名のWEBグループ面接です。
最初は自己紹介から始まり、順調に進んでいきました。
しかし、途中から面接官の声が聞きづらくなり「もう一度質問をお願いします」と何度かお願いしたそうです。
やがて面接官の声が完全に聞こえなくなると、口元で質問内容を読み取るしかない状況に。
質問とは全く違うことを話してしまっていたのだろうと想像がつきます。
第一志望の会社に入るため、これまで何度も面接練習を重ねました。
たゆまぬ努力を間近で見てきたので、なんとかならなかったものかと私もやりきれない思いでいっぱいでした。
本人はもっと悔しい思いをしているのは言うまでもありません。
結果は不合格。
ここで、読者の皆さんは
「面接官の声が聞こえないのなら、すぐにそのことを伝えなきゃ」
「口頭やチャットで伝えられないなら、電話でもして指示を仰ぐこともできたはず」……
というふうに思われるかもしれません。
しかし、本人にとって、この日の試験は絶対通過しなければならない、夢や人生さえ懸かった重大な場面。
そのプレッシャーに加え、他の受験者もいて、タイミングを誤れば話をさえぎってしまうかもしれないという状況です。
どんどん追い詰められ、冷静な判断ができなくなってしまうというのは、無理もないことと思います。
自宅ではなくキャリアセンターを使うという対策をしたうえで起きてしまったこのトラブル。
学校の職員も面接終了後に事情を説明しましたが、後の祭りでした。
企業側がこのような事態をどのように受け止めるかは各企業によるとは思いますが、多くの企業ではトラブルが起きたらすぐにダメということはなく「不測の事態に冷静に対処できるか」を見ています。
今回の場合、もしかしたら「様子が変だから何か通信の問題が起きているのかもしれないな、でも言い出してこないな、どうするつもりだろう?」と思われていたのかもしれません。
事前の通信環境の確認に関しては学生にこれ以上できることはあまりなかったと思います。
足りなかったのは、「それでもトラブルが起きてしまったとき」を想定し、対応を考えておくことだったと思います。
いざ起きてからでは焦りや緊張で適切な対応をとるのが難しくなります。
また、別の学生ですが、通信環境が悪く、ログインが試験開始に間に合わずに試験に落ちてしまったという学生も数名いました。
試験前は時間に余裕を持ってアクセスし、問題が起きていれば試験開始時間になる前に企業へ電話等の手段で連絡を入れるべきです。
これもやはりトラブルが起きてからでは正しい判断ができなくなる恐れがありますから、事前の「イメトレ」が重要です。
通信環境のトラブルや機器の故障などは、どんなに準備していても、誰にでも起こりえます。
「トラブルが起きないように」する準備も大切ですが、「トラブルが起きてしまったことを想定して」の準備もしておきましょう。
同居者の協力は必須。「音」の問題
次は、試験中の周囲の「音」について。
ある大手商社のWEB筆記試験を自宅で受験した学生のお話です。
その試験は、不正対策で「試験中に声や音がしたらその時点で失格」というルールがありました。
その試験の最中、何も知らない妹が大音量でYouTubeを再生しながら階段を上がってきたそうです。
そしてさらに悪いことに、受験中の学生は妹の行動に動揺するあまり「静かにして」と叫んでしまったのです。
その時点で筆記試験は失格。
状況を会社に電話で説明しましたが、結果はNO。
妹を責めましたがどうにもなりません。
家族等と同居している家での受験では、同居者全員の協力が不可欠です。
試験の前に、この時間だけは静かにするよう必ず伝えておかなければなりません。
この例のように、面接だけでなく筆記試験でも同様に協力を得ておくべきです。
「afterコロナ」も見据えた本気のオンライン就活対策を
オンライン就活では、交通費がかからない、遠方での受験が気軽にできるなどの利点も多くありますが、その反面、従来の試験では起こりえなかった新しいトラブルでせっかくのチャンスを逃してしまうこともあるのが恐ろしいところです。
指導をする教職員、キャリアセンターとしても、さまざまな事例を収集し、よりよい対策を作っていかなければなりません。
コロナ禍の長期化、さらに「afterコロナ」にもオンライン就活は残っていくであろうことを考えると、急場しのぎにとどまらない対応が必要です。
本来の力を発揮できずに悲しい思いをする学生を一人でも減らせるよう、がんばっていきましょう。
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川口 晴美
元日本航空グランドスタッフ。在職14年の間、JAL「サービスの達人」社長賞や社内接客大賞「ホスピタリティ賞」受賞。全国各地の空港で指導教官として勤務。退職後、大学、専門学校の非常勤講師として客室乗務員やグランドスタッフを多数輩出。現在は、大学、専門学校(医療系、留学生)高校、NHK文化センターで教える。
オフィス川口(G-mother)を設立し、学生の就活サポート、各種検定、企業研修を手掛ける。サーティファイ認定会場。