現代社会は、情報と切っても切り離せない関係にあります。
新聞やテレビ、書籍などでさまざまな情報が発信されているだけでなく、インターネット上でも大量の情報が瞬時に行き交っています。
このような情報社会において、正しい情報を取捨選択する「情報リテラシー」は必要不可欠な能力です。
本記事では、情報リテラシーとは何か、また情報リテラシーを向上させる方法をご紹介します。
目次
「情報リテラシー」とは正しい情報を見極め活用する能力のこと
世の中にはさまざまな情報があふれています。
この「情報」とは、インターネット上で発信・受信されるものだけでなく、新聞やテレビ、書籍、雑誌、噂など、この世の中にあるすべての「意味や事情、内容についての知らせ」を指します。
これらの情報を適切に読み取り、活用する能力が「情報リテラシー」です。
具体的には、
- 情報を検索して選び取る能力
- 情報を分析し、真偽を見極める能力
- 正確な情報を発信する能力
などが挙げられます。
ITリテラシーとの違い
「リテラシー(literacy)」は、元々「読み書きの能力」を表す英単語ですが、現在は「知識を活用する能力」という意味で使われています。
「情報リテラシー」と似た言葉に「ITリテラシー」があります。
これらの言葉はどう違うのでしょうか。
ITとは「Information Technology」の略で、インターネットを利用した情報技術のことです。
ここには、コンピュータなどのIT機器も含まれます。
「ITリテラシー」とは、「ITに関する事柄を理解し、技術を使いこなすスキル」のことを指します。
メディアリテラシーとの違い
「メディアリテラシー」という言葉も聞いたことがあるのではないでしょうか。
「メディア」とは「出来事」と「私たち」の間に立ち、情報を中継する「媒体」のことです。
具体的には、新聞・テレビ・雑誌・SNSなどが挙げられます。
「メディアリテラシー」とは「メディアが伝える情報を読み解く能力」を指し、「ITリテラシー」、「メディアリテラシー」ともに、「情報リテラシー」より狭い意味で用いられています。
【具体例】情報リテラシーの低さによって起こり得るリスク
現代社会では、情報が大きな影響力をもっています。
そのため、情報リテラシーが低いと不利益を被る危険性があります。
ここでは、情報リテラシーの低さが引き起こすデメリットを見ていきましょう。
匿名での誹謗・中傷によるトラブル
現実の社会では言えないような本音も、インターネット上であれば、名前を伏せて気軽に発信できてしまいます。
匿名での発信が可能なために、誹謗・中傷に当たる内容を投稿するハードルが下がってしまうことが、インターネットの恐ろしさです。
相手のアカウントに直接悪意のあるメッセージを送ることだけでなく、誹謗・中傷に当たる投稿の拡散も名誉毀損に該当します。
近頃、安易な投稿や拡散を原因に、多くの訴訟が行われていると耳にしたことがあるのではないでしょうか。
情報リテラシーが低いと、このようなトラブルに発展してしまうことがあるのです。
関連記事:SNSの悪口はどこからが誹謗中傷?過去の事例や対応策を解説
フェイクニュースによる誤った情報の拡散
フェイクニュースとは、インターネット上で拡散され、現実世界に負の影響をもたらす虚偽の情報を指します。
人々の怒りや正義感といった、感情に訴えかける内容のものが多いという特徴を持っています。
「客観的事実」と「感情的な訴え」を比較すると、世論に大きな影響を与えるのは後者です。
情報リテラシーが低いと、大規模かつ急速に拡散するフェイクニュースに踊らされ、誤った情報の拡散に加担してしまう危険性があるでしょう。
SNSからの個人情報の特定
セキュリティの面でも、情報リテラシーは大切です。
インターネット上にある無数の情報を総合すれば、SNSに投稿した1枚の写真から住所を特定することも可能なのです。
関連記事:位置情報共有アプリの危険性とは?トラブルの事例3つと注意点を解説
特定された個人情報は、犯罪に利用される恐れがあります。
また、企業の不用意な投稿によって個人情報が流出すれば、その企業の信用は失墜してしまうでしょう。
情報リテラシーが低い人の3つの特徴
情報を取捨選択する能力が求められる社会において、情報リテラシーが低い人にはどのような特徴があるのでしょうか。
ここでは、3つの特徴を考えてみましょう。
①情報を疑わない
新聞・政府刊行物・教科書・公式HPなどは、一般的に信頼できるメディアといえるでしょう。
しかし、現代社会が変化するスピードは速く、昨日まで正しかった情報が今日は誤っているということも考えられます。
また、メディア自体は信頼できても、根拠となる情報に誤りがあるかもしれません。
「疑う」というと聞こえは悪いですが、情報の多い現代社会では、情報を盲信しないことと「本当だろうか、調べてみよう」という姿勢が大切です。
情報リテラシーが低い人は、この「情報に懐疑的に接する姿勢」が欠けているようです。
②自分で検索して調べない
検索エンジンを使っていると、蓄積された個人の閲覧・視聴の履歴から、その人の好みにあったコンテンツが優先的に表示されます。
興味をそそられるコンテンツが自動的に次々と表示されるため、閲覧は興味のある分野に偏り、受動的になりがちです。
たとえば、インターネットを受動的に使用している人は、いざ何かを検索しようとしても、適切なキーワードを思いつくことができません。
自ら能動的に情報を取りにいかなければ、情報を選別する能力はつかないのです。
③インターネットの危険性を理解していない
世界中の情報はメディアによって伝えられます。
しかし、それぞれのメディアが情報を伝える過程には大きな違いがあります。
個人の考えを即時的に自由に発信できるSNSに対し、書籍は多くの人が推敲や校正を重ねて完成させるメディアです。
これらは、発信されるまでの過程が大きく異なるため、情報の質や精度は同一ではありません。
特に、インターネット上には有用な情報もある一方で、誤った情報や犯罪に当たるような情報があるのも事実です。
このような情報の質や精度の違いに目を向けず、インターネットの危険性に目を瞑ってしまう人は、情報リテラシーが低いといえるでしょう。
情報リテラシーを向上させるための対策
情報リテラシーが低いと、さまざまな弊害が生じます。それでは、どうすれば情報を精選し、利用する能力を育てられるのでしょうか。
ここでは、情報リテラシー向上のための方法を考えてみましょう。
自ら発信・受信する機会を増やす
情報リテラシーを高めるには、情報を正しく発信・受信する能力が大切です。
そのためには、まず情報そのものに触れる機会を増やさなければなりません。
ここで活用したいのが情報発信ツールです。
SNSやブログなどのツールを使えば、手軽に情報を発信できます。
また、コメントやリアクションで即時フィードバックを得ることも可能です。
得たフィードバックをその都度活かし、発信する情報の内容や精度を高めていくことも情報リテラシーを鍛えることに繋がります。
自ら発信する機会を増やせば、自然と情報リテラシーを鍛えられるでしょう。
その際は、下記のような点に注意しましょう。
- 事実に基づいた情報に限定して発信する
- 個人の意見や感想を総意のように発信しない
- 出所のハッキリしない情報を拡散しない
複数の媒体から情報を集める
情報には発信する人の主観が入ります。
また、立場やアカウントが違えば、発信する情報も変化します。
従って、1つの媒体の情報を鵜呑みにするのは危険です。
信憑性の高い情報を得るためには、複数の媒体から情報を収集し、総合して考える必要があります。
「SNSは信頼できない、新聞は真実を書いている」のかというと、必ずしもそうとは限りません。
どの情報が信じるに値するかを自分で調べ、考えて判断することが大切です。
資格を取得する
情報リテラシーの向上に繋がる資格として、次の3つが挙げられます。
①情報検定(J検)
文部科学省後援の、現代で求められる総合的な情報処理技術を習得できる資格です。
「情報システム試験」「情報活用試験」「情報デザイン試験」の3分野で構成されています。
なかでも「情報活用試験」は、情報を利用・活用する能力が問われる試験です。
②ITパスポート試験
情報処理推進機構が実施する国家試験です。
ITの専門用語はもちろん、経営全般に関する知識など、情報社会を生きるうえで必要な情報処理の能力を総合的に問われます。
特に、情報セキュリティについて学べる点がおすすめです。
③情報セキュリティマネジメント試験
これも情報処理推進機構が実施している国家試験です。
ITによる情報セキュリティ技術は日々向上していますが、情報を守る最後の砦は「人」です。
「情報を適切に管理できる人材を育成する」という社会的ニーズに応えるために創設された人気資格です。
日本と海外の情報リテラシー教育の違い
情報は世界を巡っているので、情報リテラシーの重要性は世界共通です。
ここでは、情報リテラシーを向上させる教育について、日本と海外を比較してみましょう。
日本|情報教育が停滞気味
経済協力開発機構(OECD)が2018年度に実施した「生徒の学習達成度調査」により、日本は「デジタル機器を授業で使用する頻度」が調査対象国中最下位であることがわかりました。
このことを受け、小中学校では1人に1台ずつ学習用端末が配布されたり、プログラミング教育が小学校から必修化されたりするなど、改革が行われています。
しかし、学校現場では、急速な情報教育の導入に混乱が続いているのが現状です。
すぐにというわけにはいきませんが、日本でも徐々に若年層への情報教育が進んでいくでしょう。
海外|義務教育から情報教育が盛ん
海外では義務教育時点から情報教育が盛んに行われています。
情報社会において必要となるのは、あふれる情報の中から適切な情報を取捨選択し、活用する能力です。
欧米では、そのような情報処理能力を持つ人材の少なさに危機感を覚え、1996年から情報教育に取り組んでいます。
現代の情報教育に不可欠なコンピュータに、学生と教師が積極的に触れる機会を設け、ソフト・ハード面の整備を行いました。
このように、海外では15年以上前から国家施策として予算を投じ、情報教育の充実化に取り組んでいます。
まとめ
現代の情報社会において、情報を見極め、活用する能力は必要不可欠です。
情報リテラシーを向上させるための国を挙げての施策の効果が表れるには、もう少し時間がかかるでしょう。
今を生きる私たちには、積極的に多様なメディアに触れ、ITをうまく生活に取り入れ、正しい情報を自ら取得しようとする姿勢が必要なのです。
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