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TOP教養学校運営【対談】私たち教員は今、何をしておくべきか?

【対談】私たち教員は今、何をしておくべきか?

2022.07.06 (最終更新:2024.03.27) 学校運営 教務情報

連載麻生塾に聞く!教育ICT活用

九州最大級の総合専門学校グループ「学校法人 麻生塾」の教育ICT活用について、牽引役である若山先生・藤澤先生にお聞きする注目の連載。「コロナ禍の緊急対応」に留まらない中長期的な取り組みの展望から、大きな組織での情報共有とプロジェクト推進の秘訣、すぐに真似したいテクニックまで、貴重な知見を惜しみなくお伝えします。

▼ウイナレッジ編集部より

麻生塾グループの教育ICT活用のキーパーソンお二人をお迎えしてお届けする連載「麻生塾に聞く!教育ICT活用」。

いよいよ最終回です。
若山先生・藤澤先生のお二人に、対談形式で語り合っていただきました。

藤澤先生

ここまで私たちの記事を読んでくださってありがとうございます。

若山先生

改めて二人で「私たち教員は今、何をしておくべきか?」というテーマにて語り合い、連載の結びにしたいと思います。

藤澤先生

この問いに対する私たちの考えを、3つにまとめました。
それでは、どうぞご覧ください!

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教育や学習の本質を考える

若山先生

最近、「授業って何だろう」「教員には何が必要とされているんだろう」って考えることが増えたんです。
これまで私が模索しながら確立した授業は、「ICTツールと動画素材が土台となり、学生が自らの理解度に合わせて自ら進めていく授業」です。
動画素材の質が良いほど、教員への質問はなく、出番がないんですよね。

藤澤先生

わかります…!
今までなら「教室に集めて、教員が生しゃべりをして、あれやこれや指示を出す」という役割がありましたけど、ICTを活用するようになると「あれ? これも自分が現場でやらなくてもいい、むしろやらないほうがいいな……?」ということに気づき始めます。

若山先生

公務員試験対策授業では特段PCアプリケーションは不要なのでPC不要、スマホがあれば「動画視聴」「設問演習」と成り立ち、我々教員も講義しないので場所も自由で。
「教室の中でなくてもいい、廊下のテーブルでやってもいいよ」と伝えています。
そうすると、廊下では学生が学生に教えるという状況が、ちょこちょこと生まれてきたんです。
ミニ先生がいっぱい出てきまして。
ますます、教員の役割って何だろうと……。

藤澤先生

専売特許だったはずの「授業で教える」ことも、そうではなくなる。
もしかしたら、動画教材だって、教員よりおもしろい動画を作れてしまうかもしれないですよね。
よっぽど教育力を磨き続けないと、学生に負けてしまう時代が来るかもしれない。
これもゲーム・チェンジかもしれません。

私は、受講者としての学生の意識も変化しているなと感じます。
「先生、こういうYouTube動画見つけました!わかりやすくないですか!?」「こういう授業の方式とかどうですか?」など、授業後の雑談で聞くことがあって驚きます。
学生は新しい教育に興味があるし、積極的に享受したいと思ってくれていますね。

若山先生

今、ちょうど取り組んでいることがあるんですよ。

藤澤先生

おお、どんなことですか?

若山先生

自己学習」について。
アップデートが激しく、勉強し続けないといけない分野って、山ほどあるじゃないですか。
プログラミングもそうですよね。
結局、卒業してからも活躍できる人は、勉強し続けられる人なんだろうと考えまして。
自己調整学習」という研究分野を知り、その論文を見ながら、学生指導に取り入れてみています。

なぜこれを追究しているかというと、動画教材の特徴の1つである「いつでも・どこでも・何度でも」を最大限に活用したいからなんです。
「ほら、やっぱり動画では勉強しないじゃん」っていう壁にぶち当たってしまわないように、「こうすれば自分で勉強できるようになるんです」という方法を見いだしておきたいと思って。

藤澤先生

興味深いですね。
自己学習力の高め方」は、教員として知っておきたいノウハウです。

若山先生

ICT活用で教員の役割がなくなったり、授業に意味がなくなったりするのではなく、形や定義が変わっていくんだと思います。
変化に対応していくには、教育や学習の本質を追究して、個の力を磨いていくことが大切で。
例えば、どういう伝え方がいいのか、記憶とはどういう仕組みなのか、なぜ一斉授業ではなく個別授業が良いのか、勉強を継続させるにはどんな仕組みが必要なのか……などを考え続けたいです。

仕事のデジタル変換を進める

藤澤先生

ICT活用だ、テクノロジーの進化だ、デジタル化推進だ、いろいろ言われていますけど、こういった変化に対応するための具体的な作業が、この2つ目「自分の暗黙知を書き出す」ですよね。

若山先生

どんなにテクノロジーが進化しても、それは手段でしかないと思うんです。
活用するためには、「自分の教育手法をそのテクノロジーに乗せられる」ことがマストです。

そのために必要なのが「デジタル変換」という作業です。
それは、経験に基づく知識や、感覚で身につけた動作、なんとなくで教えていることなどの暗黙知を、コンピューターに伝えられる形式にするということ。
「知識を伝えるための言葉にする」「何をみて“できる”と判断するか」「この知識を習得すれば、これができるようになる」など、ひとつひとつの知を言語化し、判断基準を作って、構造化していくんです。

藤澤先生

とはいえ、暗黙知を形にするのは大変ですよね……。
座学中心or実技が多いなど学科や教科の特性によっては、難しいと思う先生がいらっしゃるかもしれないです。

若山先生

第一歩は、自分の教育活動を書き出して、知識を言語化して整理していくことですね。
目に見えやすいこと、書き出しやすいことからでいいと思います。
授業中に口酸っぱく言っていることは何か、から始めるのもやりやすいですね。

このプロセスにもテクノロジーの力を借りられます。
例えば、私たち麻生塾グループが開発した教育プラットフォーム「Teachare」は、動画などデジタル教材を格納しています。
将来的には他校の先生も使えるツールにしていくことも見据えながら、まずは麻生塾内での活用展開中です。
これは、私たちの教育活動をデジタル変換したものとも言えます。
こういった既に確立されているものは、有効活用したいですね。

ちなみに、「Teachare」の教材は、座学(認知・非認知)授業、グループワーク授業、実技授業など、さまざまな授業形式で検証し、良好な結果が出ています。

先生同士のつながりを築く

藤澤先生

私は2020年から、若山先生は2013年からICT活用に取り組んで、発信を続けてきました。
前の記事で書きましたが、最初は冷ややかに見られていました。
学内動画チャンネル「おたがいさまチャンネル」も思った以上に見てもらえない、反応がないことでしょんぼりしましたね……。

若山先生

学生にアンケートをとったり、学習効果をはかったりすると、確実に良い結果が出ているにも関わらず……ですよね。
でも、見てくれる人は必ずいます
同志を見つけて、つながり、声を掛け合えれば、やっていけるんですよね。
私たちはそうでした。

藤澤先生

少しずつですが、動画教材を使って授業をする教員が増えてきました。
私と同じ学科の教員たちにも広まりまして。
8人でいろんな方式を試し、検証し、スキルを磨いています。
トリガーになったのは、みんなが尊敬するベテラン教員の「やりましょう!」という声かけでした。
「ミーハーっぽい私が声かけしてもダメなのね…」と少し悲しかったですが、影響力のある人が味方になってくれたのは大きかったです。

若山先生

それはうれしい変化ですね! 希望の光だ……。

藤澤先生

とはいえ……麻生塾の中で大多数の理解や応援を得られているわけではないですし、反応もまだまだなのがつらいところですよね。
でも、学外に目を向け始めてから、気にならなくなってきました。
ウイナレッジのおかげで学外に発信でき、他校の先生にも読んでいただけています。
例えば、理解者は1%しかいないとしても、学外へ視野を広げれば、1%は大きな数字です。

若山先生

そう!つながりは、学内だけじゃなく、ICTを活用すれば学外へ広げることができます。
学校の規模が小さくても、地方の学校だったとしても、ICTを活用すればつながれます

藤澤先生

学内ではなかなか評価されなかったとしても、発信することで学外から注目を浴びることがあるかもしれません。
学校の規模や場所の垣根を越えて、活躍する先生が出てくるかもしれない。
他校の授業を受け持つなんて働き方も考えられます。
変化が激しい時代は、いろんなチャンスがあるんですよね。活用しない手はない!

若山先生

始めてみよう、変えてみよう、そういう意欲のある先生が「戦友」をみつけられるように。
ウイナレッジはそういう場になってほしいです。
先生のコミュニティを作っていきたいですね。

藤澤先生

あとで、ウイネットさんに要望を出しておきましょう!

若山先生

さて…「私たち教員は今、何をしておくべきか?」という問いに対して、私たちが考えていることを語ってまいりました。

  1. 教育や学習の本質を考える
  2. 仕事のデジタル変換を進める
  3. 先生同士のつながりを築く

少しでも参考になっていればうれしいです。
私たち二人も相変わらず悩み、試行錯誤しながら挑戦していますので、またここで発信していけたらと思っています。

藤澤先生

またお目にかかりましょう!

▼ウイナレッジ編集部より

全12回にわたる連載をご覧くださった皆様、誠にありがとうございました。
教育ICT活用という、専門学校業界、教育業界の喫緊の課題について積極的に取り組んでこられた若山先生・藤澤先生の見識をこのウイナレッジという媒体を通して多くの学校、先生方にお伝えしたいという思いで始まった連載でした。
お二人が実際に現場で奮闘する中で蓄積してこられた具体的・実践的な知見の数々が多くの方に届き、お役に立てることを私どもも心より願っております。
ウイナレッジはこれからも若山先生・藤澤先生の取り組みに注目してまいります。

対談の中では、両先生から「ウイナレッジを先生たちのコミュニティに!」というお話をいただきました。
コンテンツ面・機能面ともに検討を進めていきます!
ご要望やアイディアなどがございましたらぜひお寄せください。

また、「教育ICT活用」というテーマにも継続的に取り組んでまいります。
「我が校も取り上げてほしい」「あの先生がすごいらしい」など自薦他薦のお声も大歓迎です。お問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。
コロナ禍で急激に進歩したもののまだまだ課題の多い「教育ICT活用」。先生方が力をあわせてよりよい教育を実現していくお手伝いができればと思います。

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この記事を書いた人
学校法人麻生塾 若山先生・藤澤先生

学校法人麻生塾 若山先生・藤澤先生

若山 祐紀憲
学校法人麻生塾 コンテンツ推進部
麻生塾における教育ICT活用の第一人者
--
藤澤 昌聡
麻生情報ビジネス専門学校 教務部 システム開発分野 常任講師
麻生塾における映像コンテンツ授業の伝道師

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