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TOP教養学校運営コロナ禍の2年間で見えた「教育の本質」とピンチをチャンスに目指す未来

コロナ禍の2年間で見えた「教育の本質」とピンチをチャンスに目指す未来

2022.06.24 (最終更新:2024.03.27) 学校運営 教務情報

連載麻生塾に聞く!教育ICT活用

九州最大級の総合専門学校グループ「学校法人 麻生塾」の教育ICT活用について、牽引役である若山先生・藤澤先生にお聞きする注目の連載。「コロナ禍の緊急対応」に留まらない中長期的な取り組みの展望から、大きな組織での情報共有とプロジェクト推進の秘訣、すぐに真似したいテクニックまで、貴重な知見を惜しみなくお伝えします。

▼ウイナレッジ編集部より

麻生塾グループの教育ICT活用のキーパーソンお二人をお迎えしてお届けする連載「麻生塾に聞く!教育ICT活用」。

藤澤先生の第1回では、コロナ禍、初めての映像授業で味わった挫折から「教師の立ち位置は変わり、教師個人の伝える力を磨くべき時が来た」ことを悟るまでの経緯について第2回では「教師個人の伝える力」を磨く3つの手法について第3回ではこれからの時代の先生に求められる「映像授業力」について第4回では「授業目的に合った映像教材の形式の選び方」と「その映像を作成するのに必要な機材」についてお伝えいただきました。

今回は藤澤先生編の最終回です。
これまでの連載の総括として、藤澤先生がコロナ禍の2年間に見出した「教育の本質」と、コロナ禍での急激な変化を経た先の教育の未来展望についてお伝えいただきます。

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コロナ禍で原点回帰。伝えることの重要性

2020年春、世界中が新型コロナウイルスの感染拡大によって教育手法の変更を余儀なくされました。
そして、普及までまだ数年、十数年かかるだろうと思われていた「遠隔授業」「映像教材」が一気に浸透しました。

この急激な変化の中、正しい手法、正しい伝え方が分からずに、教育界は混乱しています。
私も戸惑いから始まり、「遠隔授業」「映像教材」で効果的な授業を行うにはどうすれば良いかについて2年間研究を重ねてきました。
様々な手法を試しました。参考となりそうな研修に参加し、書籍を読み、動画を見ました。
その研究の中で分かってきたことが、結局は「教員自身の伝える力が最大のポイントになる」ということです。

遠隔授業や映像教材では、話し手の「伝える力」が前面に出ます。
上手い人とそうでない人の差が際立って見えてしまい、教育力格差が発生すると考えています。

ですが、本来教師というのは伝える力を磨き続けなければならないものです。
「学生の興味を惹くためには」「難しいことを理解してもらうためには」ということを日々考えながら、伝える力を向上させ続ける使命を持っています。
しかし、日々の業務の忙しさから、自らの授業を振り返るきっかけを持てないまま過ごしてきた方も多いのではないかと推察します。

それが「遠隔授業」「映像教材」という、自らの授業を客観視できるきっかけを得たことで、「伝える力」「教師の個の力」を向上させる原点回帰につながっていると思います。

この変化の時代には、個の力を伸ばしていく教師が必要です。
そしてそんな教師が新しい時代の教育を作り上げていくのではないでしょうか。

「映像教材」の利用で、教師の仕事が変わる

このコロナ禍は、教育界にとって大きな試練となりましたが、大きな恩恵ももたらしたと考えています。
それが「映像教材」の普及です。

今までは、「教師たるもの、学生の目の前で話してナンボ!」という考えが、教師にも、学生にも、世間にも当たり前に存在していました。
私自身もそう思っていました。

しかし、世界中で「目の前で話す」ことを取り上げられ、「映像」にシフトするしかなくなった2020年以降、映像を使って授業することが「悪」でなくなりました。
これまでであれば、教師が話さずに映像を使う場合、ある意味「サボってる」と教師も学生も感じてしまいがちだったと思います。
ですが、映像教材の有効性が浸透した今は、分かりやすい動画であればむしろ歓迎されるようになったのです。

教師が「目の前で話すこと」から解放されると、様々なメリットが発生します。
同じ説明を何度も繰り返すという、時間に拘束される働き方も変わるでしょう。
学生からの質問対応も、映像に任せられる部分も増えるでしょう。
学生が映像を見ている間は、教師が学生を観察する余裕も生まれてきます。
今までにできなかったことができるようになる可能性を秘めているのです。

それでも「映像では本来の意図が伝わらない」とおっしゃる先生もいると思います。
では、テレビ通販の番組を見て「すごい!ほしい!」と思ったことはありませんか?
TEDのプレゼンを見て感動したことはありませんか?

映像でも充分に必要な情報、意図を伝えることができます。
その技術を知っているか知らないかの差でしかありません。

私は今後も先生方に向けて「映像による伝え方」を発信していきたいと考えていますし、日本全国に仲間をつくりたいと思っています。
そうして仲間が増えていき、「映像による教育」が当たり前になれば、教師の働き方は大きく変わります。
教師という仕事が、話すことだけに時間を割かれ忙殺されるだけの労働から、もっとクリエイティブな仕事になるための唯一の方法が「映像教材の普及」ではないかと思います。

「授業の方法を変えても学生の成長は止まらない」と結果が証明

麻生情報ビジネス専門学校では、2020年から本格的に遠隔授業、映像教材に取り組んできました。
当初は学習効果が下がるのではとの心配がありました。

しかし、2年経った今、うれしい結果が。
コロナ前と比較しても、資格の合格実績や学力が向上している科目が多かったのです!
これは本当に驚きでしたし、とてもうれしいことでした。

学生の反応や感想についてもかなり良好で、コロナ前の従来授業は大半の学生が求めていないということも分かりました。
この2年間で実践した方式や、学生の反応についてはいつか機会があればご紹介いたしますが、この結果は学校にとって大きな自信となりました。

学生からの感想で見えてきた重要なことの中から一つだけ、「これだけは全国の先生に知っていただきたい!」というものを紹介します。
それは、「学生は先生の生しゃべりを求めていない」ということです。
教師がプライドをもってやっていたことでもあり、寂しい部分もありますが、これが現実だったのです。

今までは「これこそが教育!」と意気込んでやってきた手法。
それを変えても学生は成長できるんです!
教師が成長すれば、学生も成長する。授業の方法は関係ないということです。

麻生塾内の先生にも変化が

私、そして同じく麻生塾の若山先生は、学内にも「映像教材」「遠隔授業の方式」を浸透させるべく、活動をしてきました。

当初は正直、かなり冷ややかな反応でした。
ただの「変わり者二人組」としか見られていなかったようでした(笑)。
「すごい方式を思いついた!」と学内動画チャンネル「おたがいさまチャンネル」で発信をしても、視聴数は伸びない、誰もマネをしない……といった具合でした。
「なんで分かってくれないんだ!」と思いながらも活動を続けてきました。

しかし、最近では少しずつ映像教材やITツールを使って授業をする先生が増えてきました
本当に少しずつの変化でした。
ですが、気がつけば授業方式がコロナ前と大きく変わったという先生が出始めています。

「伝える力」という面でも、見違えるほど映像授業力を磨かれている先生も出てきました。
何がそういった先生たちを動かしたのか、それは正直分かりません。
私や若山先生の発信がどれくらい影響したのかもわかりません(関係なかったかも!?)。

ですが、麻生の先生たちは「教師とはこうあるべき!」という従来の幻想を見直し、新たな教師像を見つけるために奮闘しています。
私もこんな学校の一員でいられることに感謝をしつつ、情報を発信しつづけていきたいと思います。

成長し続ける教師による「本当におもしろい学校」実現

コロナ禍前の私たちが慣れ親しんだあの教育スタイルは、明治初期から始まったものだそうです。
その教育スタイルが2020年ごろまでほとんど変わらなかったことの方が奇跡みたいなものです。

時代が変われば様々なことが変わります。
教育界も、今を逃すと次はいつ変化を起こせるか分かりません。
今こそチャンスなんです!

変化を起こすにはもちろん多大なエネルギーが必要です。
しかし、この変化は未来に大きな影響をもたらすものだと信じています。

私は学生時代、本当に勉強が嫌いでした。周りが引くほどです(笑)。
「学び」は人間の本能であり、楽しいものだということを今は理解しています。
しかし、それに気づいていない若者は多いですし、これからもそんな若者が生まれてくるでしょう。

そんな若者に「本当におもしろい教育」ができたとき、日本が、世界が大きく変わると思います。

九州にいるしがない一人の教師には何もできないかもと思うこともあります。
しかし、同じ志を持った教師が集まれば教育は変えられるはずです。
私はそんな教育を変えるお手伝いをすることが使命だと思っています。
勉強が嫌いな人の気持ちは、それを克服した私にしか分からないという自信があります!(偉そうに言えることではありませんが……)

そして、自分の子供が高等教育を受ける頃(約15年後)には、「本当におもしろい学校」を実現していたいと心に決めています。
この連載を一つのきっかけに、そんな仲間に巡り合えたらと思っています。

▼ウイナレッジ編集部より

藤澤先生編の最終回は、コロナ禍をきっかけに見出した「教師の本質」への回帰について、そして「本当におもしろい教育」「本当におもしろい学校」実現への熱い想いを綴っていただきました。

コロナ禍は多くの人にとって本当につらい経験をもたらし、急激な変化を迫られた教育機関でも「どうしてこんなことに……」と思わずにいられないことが多かったと思います。
その中でもこの教育界の変化を機にご自身を見つめなおし、教師と教育の本質に向き合ってこられた藤澤先生。
「嫌いだった勉強を楽しいものに」「やむを得ず始めた映像授業を従来の授業よりよいものに」変えてきた「ピンチをチャンスに」という前向きな姿勢には本当に勇気付けられますね。
藤澤先生や志を同じくする先生方が集まって力を発揮されるのを、ウイナレッジは今後も応援していきたいと思います!

次回は連載全体の最終回として、若山先生・藤澤先生の対談形式でお届けします。
最後までぜひお楽しみください。

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この記事を書いた人
藤澤 昌聡

藤澤 昌聡

麻生情報ビジネス専門学校 教務部 システム開発分野 常任講師
麻生塾における映像コンテンツ授業の伝道師。
専門は、プログラミング、情報処理、ITビジネス。
2020年4月、新型コロナウイルスの感染拡大により突如やることになった初の遠隔授業で「(おもしろいと思っていた)自分の授業が、動画で見るに堪えない」ことにショックを受ける。同時に、教師の立ち位置が変わっていく「ゲームチェンジ」を予想。急遽、自身の教育力の見直しと研鑽に取り組み始め、かねてから関心のあった「教育をエンターテイメントに」を追求している。そのロールモデルは、オリエンタルラジオの中田敦彦氏。
さらに同塾内の教師陣に向けた学内動画チャンネル「おたがいさまチャンネル」を立ち上げ、映像コンテンツ教育について、情報発信と啓発活動を続けている。

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