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TOP教養スキルアップ学校でのコミュニケーションを考える ―ファシリテーションのマインドとスキルから―【特別編 第6回】

学校でのコミュニケーションを考える ―ファシリテーションのマインドとスキルから―【特別編 第6回】

2024.07.03 スキルアップ

連載大原先生の学生指導のすゝめ

動機づけ教育プログラム「実践行動学」を開発する「実践行動学研究所」大原専務理事の学生指導のすゝめ。 学習塾での指導歴25年の大原先生が、実例を用いて学生への接し方をお伝えするシリーズです。 テンポのよいユニークな文章は、一度読んだらハマること間違いなし。

本連載の執筆者である大原先生が専務理事を務める「実践行動学研究所」のセミナーでは、コミュニケーションに関する講演を行っています。
この度、その講師である法政大学キャリアデザイン学部教授廣川進様より、2記事を寄稿していただきました。

今回は、その2本目です。
学校で行うコミュニケーションの中で「ファシリーション」を意識している先生はいらっしゃるでしょうか。
本記事では、教室でのファシリテーションの初歩的な取り入れ方について、廣川先生がわかりやすく解説しています。日々の授業のヒントにしていただければ幸いです。

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「令和の日本型学校教育」を担う教師に求められる資質能力とは

以前、ある高校の普段の授業をたまたま見る機会がありました。
すでに授業が始まっている教室にあとから入ったのですが、まだ休み時間なのか、と思うくらいに無秩序、カオスといってもいい状況です。生徒の数人は後ろの方で立ち話をしていてまだ席に着いていません。座っている生徒も、何人かは後ろの生徒とおしゃべりしています。
教室中がざわざわとうるさい。先生は教壇の真ん中に立って、まるでこの教室の状況が目に入っていないかの如く、淡々と教科書に目を落としたまま、時折、何事かを呟いていますが私にも聞き取れません。
衝撃的なシーンでした。

小学校で崩壊している授業の様子を見たことはありますが、高校でもこのようなクラスがあるのですね。

その先生の力量なのか、クラスの個々の生徒の特性が影響しているのか、教育の現場の苦労もしのばれます。

中央教育審議会では、「令和の日本型学校教育」を担う教師に求められる資質能力を再整理しています。

クリックで拡大します

参照:中央教育審議会「令和の日本型学校教育」を担う教師の在り方特別部会(第3回)・教員免許更新制小委員会(第4回)合同会議資料
「資料2_教師に求められる資質能力の再整理について」(p. 19)

数多くの提言がなされていますが、この中で私が特に注目したのが「ファシリテーション」です。
「ファシリテーション」とは図の定義にもあるとおり、
集団が持つ知的相互作用を促進する働き。人が本来もっていた力を引き出し、相互にかけ合わせることで増幅し、集団の力を最大限に高めていく」ことです。

この力が、教師同士、教師と子供、子供同士の相互作用を活性化させる、というわけです。

ファシリテーションを取り入れた授業例


みなさんは、学校のコミュニケーションの中で「ファシリテーション」を意識したことはありますか。

「ファシリテーション」のマインドとスキルを職員の会議や授業のやり方、あるいは保護者会などで取り入れると、さまざまなレベルの相互作用が生まれ、学生一人ひとりの成長やクラスのまとまりにつながります。

教室での活動にファリテーションを取り入れることはできないでしょうか。
授業の全部を、というのは難しいでしょうが、一方的に教師が講義をし続けるのではなく、相互交流の時間を挿入するということでもいいと思います。

たとえば、大学の授業で私がやっている例をご紹介します。
いきなり話し合い、といっても今の学生たちは慣れていないので、段階を追っていきます。

①授業の内容に応じて双方向で取り組める課題を設定する。たとえば「キャリアカウンセリング」の授業で「これからの働き方について考える」の単元の回では、未来の働き方を考える参考となりそうな統計データ等を見せて解説した後に、「自分の10年先の働き方をイメージする」を考える課題にする。

②まず一人で考える時間をとる。課題シートに自分の考えを記入する。

③隣同士、AさんとBさん2人組になって、シートに書いたことを順番に読み上げる。肯定的なフィードバックを心がけることを指示する。

④2人とも一通り読み上げ終わると、私の方を向いて、「次に何をしたらいいか」という顔をしてくるので、「話し合ってください」という。
まだポカンとしているので、「2人で共通点とか、相違点とかを見つけてみて」などと話し合いのヒントになりそうな指示を出す。

⑤次は4人1組になって、「他己紹介」。Bさんはさっき聞いたAさんの意見を、C・Dさんに説明する。相手の意見を理解して、それを他者に要点を押さえて説明する

⑥4人で話し合う。観点は先ほどと同様。

⑦全体でのシェアを行う。残り時間に余裕があれば、全員順番に感想を言ってもらう。発言のポイントを私は板書していく。私からの肯定的なコメントを返しながら。

⑧全体のまとめのコメントを私が言って終わる。

一貫して心がけることは、この教室では何を言っても否定されない馬鹿にされない、という心理的安全性や相互の尊重が保証されていることを言語・非言語的なメッセージとして伝え続けることです。

こんな私のゼミは学部の中での人気が高い方といえます。15人が定員なのですが、ゼミの見学会には延べ50人が訪問して、第一志望に書いてくる学生も倍率が2倍ほどです。

ファシリテーションを取り入れた活動を実施すると、参加者の相互理解が進み、自己肯定感が上がり、発言力に加え、他者の異なった意見や気持ちを受容し理解する傾聴・共感力も高まります。

いかがでしょうか。
みなさんのお仕事のどこかに、会議や授業などの実施方法に「ファシリテーション」を部分的にでも取り入れることができないでしょうか。

「日本型学校教育」で大切にされてきた「協働的な学び」を促進する大きなカギも担っているかと思います。何よりも、みなさんの学級経営が進めやすくなったり、ひいては中退者の抑制にも効果があるのではないかと思います。
よき「ファシリテーター」になるための勉強や研修などもぜひトライされてみてはいかがでしょうか。

▼ウイナレッジ編集部からのお知らせ

本記事を寄稿してくださった法政大学 廣川教授が、「実践行動学Webセミナー」にて基調講演講師として登壇されます。

実践行動学は、学生の夢の実現、目標達成に必要な「心のあり方」と「達成のスキル(技能)」を身につけることを目的とした、アクティブ・ラーニング型動機付け教育プログラムです。ぜひこの機会にご参加ください。

【実践行動学Webセミナー】
・基調講演タイトル:教員に求められる『スクールコミュニケーション』のスキル向上のために(法政大学 教授 廣川進様)
・日にち:2024年7月10日(水)
・会場:オンライン会場(Zoom)
・主催:一般社団法人 実践行動学研究所
・後援:株式会社 ウイネット
・参加費:無料

詳細はこちら

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この記事を書いた人
廣川 進

廣川 進

法政大学 キャリアデザイン学部 教授(公認心理師・臨床心理士・文学博士)。
1959年生まれ。慶應義塾大学文学部卒業後、株式会社ベネッセホールディングスにて、雑誌編集(『ひよこクラブ』の創刊等)の傍ら、大正大学大学院臨床心理学専攻修士・博士課程を修了。2001年退社後、大正大学心理社会学部臨床心理学科教授を経て現職。

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