連載侑加先生のお悩み相談室
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今回は、「授業中に寝ている学生への対応」についてのお悩みです。
入学してから少し時間が経過し、学生も学校生活に慣れてきた頃ではないでしょうか。
日々の勉強に加えて、資格試験へのチャレンジやアルバイト等、忙しく過ごしていると思います。
そこで問題となってくるのが思わず授業中に寝てしまうことです。ヤル気はあるけど、身体が付いてこない…
なんてことも。寝ている学生が1人でもいると授業全体に影響を及ぼしてしまいます。できれば上手く解決して、学生には気持ちよく授業を受けてもらいたいですよね。
授業中に寝ている学生への対応はどうしたらいい?……侑加先生に聞いてみましょう!
目次
【今回のお悩み】授業中に寝ている学生への対応について
相談者:井岡先生(仮名)[男性・30代前半]
私はビジネス系の専門学校で教員をしています。先生になって5年程経ちました。ちなみに私は当校の卒業生です。
現在1年生のクラス担任をしています。入学したばかりの頃は緊張していた学生もだんだんと学校生活に慣れてきて、今では活発に学校生活を過ごしています。
学校生活に慣れてきたことはいいのですが、最近授業中に寝てしまう学生がチラホラと見受けられます。ウトウトではなく、机に突っ伏して寝ている学生もいます。
学生も日々忙しいことは重々承知しています。資格試験の勉強、学校のイベント準備、アルバイトetc…遊んでいる暇もないぐらいです。
ただし、授業中に寝ている学生が1人でもいると、同じ授業を受けている他の学生に影響してしまいますし、寝ている学生を起こすために授業を中断するのもよくないと思い、見て見ぬ振りをしてその場をやり過ごすことが多々あります。もちろんその場で寝ている学生を叱りつけるようなことはしません。
寝ている学生本人のため、他の学生のためにもどのような対応をするのがいいのでしょうか。
思い返すと私も学生時代、授業中に眠くてどうしようもない時もありました。
ぜひアドバイスをお願いします。
以上が今回のお悩みです。
それでは侑加先生の回答をご覧ください!
「文書で厳しく、口頭で寄り添い」社会人として働く自覚を促しましょう
井岡先生、ご相談ありがとうございます。
寝ている学生への対応には、本当に苦慮しますよね。
先生は、「その場で寝ている学生を叱りつけるようなことはしません」とおっしゃっています。冷静でスゴイな~と思いました。
私は20代の頃、叱りつけて、男子学生に逆ギレされたことがあります。大きな体の学生に「うるせぇ!」と怒鳴られ、教室も嫌な雰囲気になり、私も泣きそうになりました。
専門学校は、義務教育ではありません。
学びたい人が学費を払って、学びに来る場ですよね。だから「そんなに寝たいなら、休んでくれたらいいのに、もう学校辞めて欲しいわ」と心底思ってしまいました。
ただ、私自身の学生時代を振り返ると…。
片道2時間半も掛かる遠距離通学で、朝5時に起きなければなりませんでした。夜10時までアルバイトする苦学生でしたので、電車でも授業中も眠かったです。午後の講義形式の授業では、突っ伏して寝てしまっていました。
今となっては、本当に失礼な態度だったなぁと、先生には申し訳ない気持ちです。
逆に先生の立場になって30年、試行錯誤を繰り返してきたように思います。
少子高齢化の時代です。
2040年、団塊ジュニア(戦後ベビーブームの子ども世代)が高齢者になり、高齢者の人口がピークを迎えると推計されています。どんどん高齢者が増え続け、少子化が進んでいきます。
18歳の学生達は、社会全体から見れば、まだまだ子どものように思われるでしょう。
しかし、2年間の学校生活を終え、社会人として働き出すと、納税し、社会を支える一員になります。税金は分配され、次世代を担う子ども達の教科書代にも充当されます。つまり、大人になり、子どもを育てる側になるということですね。
18歳は、制度が変わり「成人」と呼ばれるようになりました。
実際、高校を卒業して働いている人は大勢います。大人としての自覚を持つ必要がある年代なのですね。いつまでも子ども扱いしていると、本人が社会と接するインターンシップや就職活動で、辛い思いをするのではないでしょうか。
社会には、一定のルールがあります。
ルール違反をすると罰則が科せられます。会社にも就業規則があります。学校のルールの中に、遅刻・欠席の扱いがあるでしょう。「15分以内の遅刻3回で、1回の欠席とする」などもよくあるルールだと思います。
遅刻者がいる場合、先生は遅刻しないようにと注意しますが、遅刻する本人が教室にいない時に注意しても意味がありません。やはり明文化して配布し、周知するのがいいと思います。
「授業中の居眠りは、欠席扱いにする」とルールの1つに加えてはいかがでしょうか。少々厳しい感じがしますが、授業に参加していないという点では、欠席と同じです。
働き出してから、眠っていてよい会社はありません。
毎月1回、ビジネスマナーデーと称して、スーツの着用を促す学校があります。スーツを着用しながら、授業中に眠っているというのは変ですよね。形を整え、心や態度も整えていく必要があります。
ルール化されていれば、眠っている学生の近くに行って起こす行為を、叱りつけられたという被害感情で受け止める学生は少ないのではないでしょうか。
「あぁ、欠席になるところを助かった」と思う学生もいるでしょう。
周囲の学生も、先生が気遣っていると感じるかもしれません。声の掛け方やタイミングを見計らえば、見て見ぬ振りをするより、本人にも周囲の学生にも良い影響を与えられると思います。
ただ、1年の途中からルール化するのでは不自然なので、4月から始めるのが適切ですよね。
グループワーク、アクティブラーニングを工夫してみましょう
すぐにできる事として、授業形態の工夫が挙げられます。
ビジネス系の授業は、どうしてもテキストに添った講義中心で、先生は板書しながら話し、学生は聞くばかりになりがちです。
井岡先生が20年前に中学生だった頃と、今の中学生を比べると、圧倒的に生徒主体によるアクティブラーニングの授業が増えています。
コロナ禍の3年で一層進んだのですが、全員にタブレットが配られていて、グループで課題について調べ、話し合い、発表します。文科省も「主体的な学び」を推奨し、企業も採用したい人に「主体的に行動できる人」を挙げています。
教室の広さと学生数にもよりますが、6名ずつくらいの島を作って、グループワークになるように考えられてはいかがでしょうか。先生の話を長く聞くよりも、学生同士の声が飛び交う方が刺激になります。
また、先生一人が寝かせないようにと頑張らなくても、仲間の目が見張り役になります。グループワークの授業案を作る際に、学生が必要な毎回の予習、授業中のグループワーク課題(板書する内容のキーワードを書かせる、一文で解答作成など)、個別課題、復習内容の提示を準備します。検定からの逆算で、余裕を持って作成してみてください。
企業の採用試験でグループディスカッションを行う会社が多くあります。
社員研修でも、グループワークを多く取り入れています。仕事は、本来チームワークを発揮する場面が多いですが、コロナ禍でテレワークもあり、いわゆる雑談も減ってしまった現状があります。特に、新入社員にとって、仲間同士のコミュニケーションさえも勉強なのですね。
色々な人がいて、色々な反応があるなと気付き、表現を工夫することは、お客様と接する際にも必要な学びです。日頃の授業から鍛えられれば、就活対策にも効果が期待できますね。
教室形式でも、学生の動きを中心に授業を組み立ててみましょう
教室の広さと学生数のバランスから、全員が前を向いて受講する場合が多いでしょう。先生はテキストの指導箇所を中心に考えて、授業を組み立てますよね。その際に、学生が「読む・書く・聞く・話す」の4技能を行う動作を考慮されてはいかがでしょうか。
「読む」場合も、黙読、一人で音読、1行ずつリレーで音読、全員で音読など、色々なケースが考えられます。
座って音読、起立して音読することもできます。読む時は、必ずペンを持たせましょう。複合的な動きを促すと変化があります。ペンを持って黙読する動作は、会社説明会などでも自然に発揮され、大事なところに線を引く、メモを取る行為に繋がり、非言語コミュニケーションとして強力な自己アピールに繋がります。
授業でプリントを配布することがあります。冒頭で全部配ってしまうのではなく、15分経過後に、前から後ろに配布、後部座席で調整させるなど、学生の動きに変化が出るようにします。
誰かを指名して配布させるのもいいですね。学生は、友人の動きには敏感です。課題を集めるのは、30分経過後に、後ろから前にリレーさせ、最前列の学生には、きれいに揃え、相手に向けて渡す所作を覚えさせます。着席のままでも、身体や腕を動かす行為が軽い運動になり、気分転換になります。
ペアで、または前列2名が後ろ向きになり4名グループを作って話し合う場面を設定し、グループ代表者をジャンケンで決めて、発表させるのも面白いです。ジャンケンがポイントです。
リーダーシップ、メンバーシップを共に育てるためには、リーダーを固定しない方がいいですよね。それぞれのグループで、発表リハーサルをする時間を作ると盛り上がりそうです。事前にこうした仕掛けを作るのは大変な作業ですが、学生の個性を把握し、時々席替えも行ってみてください。
先生が意図を持って席を決めたい場合は、くじ引きという演出をしつつ、特定の学生のみ、予め決めておくと失敗がありません。
検定前は講義を行い、直後に演習問題を解く授業が多いですよね。
できれば、上位1割、下位1割には、本人のレベルに合った問題を用意したいです。テキストに適切な問題が無ければ、先生がプリントを用意され、机間巡視しながら指導されるのが理想です。昨今は、「寄り添う」ことを重要視しますよね。小学生から個別指導塾が流行っていて、一斉授業と個別指導の組み合わせに慣れている人も多いのではないかと実感しています。
一斉授業だと他人事で聞いていない学生も、個人的に声を掛けられれば自分事になり、やらざるを得なくなります。こうしたマメな目配りによる信頼関係の構築が、一斉授業でもより良く作用するようになるでしょう。先生のご負担が大きくて大変ですが、学期毎に経験値は増していきます。「前にもこういうケースがあったな」と段々余裕を持てるようになるでしょう。
最後に
なるべくカーテンやブラインドを開けて、外の景色が見えるようにすると、時間経過が早く感じられます。エアコンやサーキュレーションで空調を整えつつ、適宜、窓を開けましょう。
爽やかな空気の中で、学生が主役になる授業を展開される井岡先生の姿が目に浮かびます!
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侑加先生
一般企業を経て、専門学校に正教員として勤務。
現在は、企業・大学講師、小中学生の塾経営。
趣味は、お笑いと高校野球、旅行。一児の母。