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TOP教養スキルアップ指導スキル(3)~学生の自己肯定感を高める承認方法

指導スキル(3)~学生の自己肯定感を高める承認方法

連載授業アップデートテクニック

変化する学生のニーズ、技術やツールの進歩、多様性の受け入れなど、常に進化が求められる現代の教育現場。授業をアップデートしなくてはいけない時期が到来しています。この連載では、教員向け研修や教員志望者の育成を行う「RTF教育ラボ」の代表で、年間300もの授業観察を行う教育コンサルタントの村上敬一さんから、専門学校の先生に向けた「令和の授業テクニック」を教えてもらいます。

学校行事や実習などで忙しい今の時期は、学生一人ひとりに目を配ることがなかなか難しいタイミングではないでしょうか。

最近では、学生の自己理解や自己受容及び、他者理解を促して、リレーション(人間関係)を構築することを目的に、4月~5月上旬の授業で「エンカウンター(多くは構成的グループエンカウンター:SGE)」を活用する専門学校が増えています。専門学校がエンカウンターを活用し始めた背景として、「学生のコミュニケーション力の低さ」「社会的スキルの不足」「中退の主な理由の解決のため」などが挙げられます。

「令和5年度 専門学校生の中途退学者・休学者等の調査結果」(文部科学省)によると、専門学校の中退者の割合は6.44%。中退の理由で一番多い回答は「学生生活不適応・修学意欲低下」で25.2%です。ここに、「学力不振」と「心神耗弱・疾患」を加えると、教員側のサポートで少なくできる可能性がある中退の理由は約50%になります。

※参照:令和5年度 専門学校生の中途退学者・休学者等の調査結果

この「中退を減らしたい」という問題は、多くの専門学校が課題として挙げている項目です。一定の効果があるとされている「構成的グループエンカウンター(SGE)」ですが、年間を通して授業の中で行うことはカリキュラム上難しく、多くの学校は年度始めの1~2回の実施だと思います。

では、この課題を別の方法で解決するためには…? 実は、行事や実習が多いこの時期だからこそできる「教員としてのサポート」が、今回のテーマ「学生の自己肯定感を高める承認方法」です。ぜひ試してみてください。

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「自己肯定感」「自己効力感」「自己有用感」とは

「自己肯定感」を調べてみると、多くの説明があって訳が分からなくなる方も少なくないと思います。また「自己〇〇」とつく言葉も、自己理解・自己受容・自己評価・自己存在感・自己有用感・自己効力感・自己充実感・自己重要感などなど…数多く存在し、ますます“?”マークが頭に浮かんでしまうのではないでしょうか。今回はその中で特に押さえておきたい3つの言葉を、私なりの定義でお伝えします。

自己肯定感自己効力感自己有用感
ありのままの自分を価値があると積極的に評価できる感情(自分自身の苦手/弱みも受け入れることができる)状況において必要な行動をうまくできると自分の可能性を認知している感情(知識/経験の根拠がある状態)自分が他者から必要とされる存在だと認知している感情

文章で書くと難しくなってしまいますが、簡単に言うと「自己肯定感は自分で自分を認められること」、「自己効力感は自分ならできると思うこと」、「自己有用感は他人から必要とされているとわかっていること」です。

「自己肯定感」は「高い・低い」などの言葉で表せる通り、上下するものです。いろいろな意見はあるとは思いますが、他人と比較することで得た「優越感」に近い「自己肯定感(相対的自己肯定感)」は、すぐに低くなりがちで、結果的に自分自身を苦しめてしまうことが多いようです。

実は、その原因の一つとして挙げられることが「褒められ方」なのです。「褒めることで自己肯定感が高まる」という記事や書籍を私自身も数多く読みました。実際に褒めることで自己肯定感が高まることはもちろんありますし、効果もあると思います。ただし、難しいのは「褒め方」なのです。特に、他者との比較に感じてしまうような褒め方や、失敗が許されないように感じてしまう、結果にこだわりすぎた褒め方は要注意です。褒められることによって他人や結果だけが気になるようになり、失敗したときのことを強くイメージしてしまい、行動することが苦しくなる…。これでは、逆に自己肯定感が低くなってしまいます。これらのことから、私は「褒める」という言葉はあまり使用せず、「承認する(認める)」という言葉を使用して、「褒めることも承認することの一つの手段」と捉えています。

自己肯定感を高めるために

まず、自己肯定感が高い状態を維持できている大人を例に考えてみましょう。具体的な考え方や行動として以下のことが挙げられます。

・他者との比較をあまり行わない(自分の軸を持っている)
・自分で物事を判断できている
・失敗を恐れずにチャレンジできる
・失敗してもすぐに振り返りを行い、落ち込んでいる時間が短い
・新しいことを行うときにワクワクしている(他者からは楽しんでいるように見える)

このことを考慮して、教員がサポートできる「学生の自己肯定感を高める方法」を考えてみましょう。

学生の自己肯定感を高める方法具体例
1.他者との比較をしないような伝達や認め方をする前回の実習でうまくできていなかった学生が今回の実習でできるようになったことを見つけた場合、過去の自分と今の自分を比べて成長していることが認識できる認め方をする。
2.「チャレンジすることに価値があり、失敗は学びのチャンスである」と伝える声掛けを行う「ナイストライ」などの声掛けで、結果に関わらずチャレンジしたことを認める。
3.リフレーミングの考え方を活用する本人は弱みと感じていることを、別の視点や見方を与えることで必ずしも弱みではない(場合によっては強みにもなる)と認識させる声掛けをする。
4.自分自身を振り返る機会を多く設定する実習においてアチーブメント(到達点)と自分自身の目標を明確に定めさせる。また、実習中と実習終了時にリフレクションの時間を設け、目標に対しての振り返りをさせる。
5.教員自身が楽しんでいる姿を見せる教員が行事などに参加する場合、思い切り楽しんで参加してみる

いくつか事例を伝えましたが、前提として「普段からの人間関係づくり」を意識することが大切です。

動機の四象限マトリックス

以下の図をご覧ください。

動機の四象限マトリックス

自己肯定感を高めるためには、何かしらの行動が必要です。そして行動する前には「動機」があります。簡単に言うと「行動のきっかけ」です。自己肯定感が高い状態の人たちの動機には特徴があり、図でいうところの第一象限(右上)「自己/感情プラス」のところです。動機のスタートはほかのどこでも構わないのですが、声掛けや承認などを通して「自己/感情プラス」に持っていけるようにサポートすることが重要です。

まとめ

今回、学生の自己肯定感を高める承認方法をお伝えしてきましたが、いかがでしたでしょうか。自己肯定感を高めることは、小学生、中学生、高校生を指導する先生方にとっても大きな課題の一つです。忙しい時期だからこそ、意識的に学生とコミュニケーションをとり、個人の成長を促す「承認」をしましょう。

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この記事を書いた人
村上 敬一

村上 敬一

RTF教育ラボ代表/教育コンサルタント/東京都杉並区内中学校学校運営協議会委員
全国の公立および私立の小学校・中学校・高等学校、専門学校、塾などで教員研修、講師研修、授業や学級経営を中心とした教育全般に関するアドバイスを行う。また、現在まで18年間に渡り、毎年約150名の教員志望者を育成。年間の授業観察数は300を超え、これまでに約5000の授業を観察している。
RTF教育ラボ(https://goseminarcourse01.wixsite.com/rtfkyouikulab

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